人文学部ゼミブログ

2013.09.17

  • 人文学部
  • 英語英米文化学科

シェイクスピアを読む

ブログ投稿者:英語英米文化学科 教授 高村 忠明

ギリスや英語圏の国々は言うまでもなく、世界のさまざまな国でさかんに上演され、読み続けられている劇作家、それがシェイクスピアです。もちろん、日本も例外ではありません。

 

シェイクスピアに初めて接する人を主たる対象とするこのゼミの目的は、シェイクスピアの面白さをゼミ参加者に自ら発見してもらうことです。今年は『マクベス』を読んでいますが、毎年、一年をかけてシェイクスピアの一つの作品をしっかりと読みこみます。

シェイクスピアを読む
ゼミ風景
その際に重視しているのは、ゼミでの共同作業、すなわち、作品の読みあわせとそれをうけての意見交換です。英文のテキストと上演も意識した翻訳が左右見開きになっている教科書を使っていますが、具体的な方法としては、まず、一つあるいは複数の場面を通して翻訳の読みあわせを行います。すぐれた翻訳を用いるメリットは、シェイクスピアの英語になじみのないゼミ参加者が、最初から劇の流れに入っていくことができることですが、読みあわせに際しては、ある役を割り振られたら、その人物が登場するときに起立し、退場のときに着席してもらいます。もちろん、台詞(せりふ)を言うときには、それが誰に向かって言われているのかを意識して、そちらに向かって言ってもらいます。
簡単な動作ですが、こうすることによって、ゼミ参加者は、台詞を声として聴くことに加え、舞台上の動きも意識することになり、ひとりで黙読しているときには気づかなかったさまざまな点に気づくようになります。劇場で幕間に観客同士あれこれ感想を述べ合うのは楽しい時間ですが、この段階になると、参加者間で、台詞の読み方をめぐってさまざまな疑問や意見が交わされるようになり、その一つ一つについて意見交換を重ねるうちに、必ずしもどれか一つだけが正しい解というのではなく、「同一のテキストがさまざまな解釈の可能性をはらんでいることこそが面白い」と感じるようになります。

 

そのような認識は、その後に続く原作(英文テキスト)精読の段階の基盤として重要です。シェイクスピアの英語は、一つの単語が二重、三重の意味をもつことも稀ではなく、それを各自読み解くことがシェイクスピアを読む大きな楽しみと言ってもよいのですが、辞書や注釈によって語義を確認するだけでなく、劇の流れを共同作業の中でしっかりと把握しておくことが豊かな理解の前提条件となります。このような作業を繰り返しながら、作品中の重要な台詞が次々と身近に感じられるようになるとき、ゼミの参加者はシェイクスピアの作品世界に一歩足を踏み入れたと実感し、さらに読み進めたいと感じるようです。あなたもこのゼミでシェイクスピアを声に出して読んでみませんか。