人文学部ゼミブログ

2008.12.01

  • 人文学部
  • 日本・東アジア文化学科

韓国・朝鮮語上級演習1・2(渡辺直紀)

韓国・朝鮮語上級演習1・2(渡辺直紀)
2007年9月、韓国・高麗大文学部前で高麗大の学生たちと
武蔵大学では、第二外国語として「韓国・朝鮮語」の科目が設置されて数年になるが、3年前のカリキュラム改組で新たに設置されたこの上級演習の授業は、 学部で初級段階の学習を終えた学生がさらに上のレベルのトレーニングをするための授業だ。カリキュラム的には日本・東アジア比較文化学科の学生のための授業になっているが、今年からは聴講生も含めて全学部から出席者を得て、毎週、和気藹藹の雰囲気で授業が行われた。また今年からは韓国の高麗大から交換留学 で武蔵大に来ている学生たち全員にも受講してもらって、雰囲気に花を添えてもらった。
 
授業の内容は大きく分けて2つ。1つは新聞のコラ ムなど韓国語で書かれた短い文章を日本語に翻訳する練習で、もう1つは自由テーマで行なう簡単なプレゼンテーション(もちろん韓国語で行なう)である。特に前者の作業で圧巻だったのは高麗大の学生たちの日本語能力の高さである。同じ韓日翻訳の作業を、日本の学生と韓国の学生が同時に行なうわけだが、日本の学生には文字通り「翻訳」であっても、それは母語への翻訳であって、原文の意味が多少分からなくてもそれをごまかすことはできてしまう。だが、韓国の学生 にとってこの作業は「外国語」への翻訳なわけで、単なる語彙力だけでは解決できない問題も多々ある。
 
しかし、高麗大の学生らはそれを見事にやってのけた。これは武蔵大の学生にもかなり刺激になっただろうと思う。また、高麗大の学生たちが時折はなつ質問、日本語や日本文化に対する問いは、 日本の学生たちにとって、そのような発信に対して、何をどう考えてどう答えてやればいいのかを考えるいい機会になったにちがいない。——また、この演習が5限にあったせいか、授業後、受講生同士何となく連れ立って食事に行くことも、ひと月に複数回はあったようだ。そのような場所でわいわいやりながら交わされた様々な議論は、ときに日本と韓国という国や民族を越えて、互いの真の理解のためには何が必要なのかを感じさせる、いいきっかけになっただろう。
 
この演習と直接結び付いているわけではないが、毎年9月に私が開催している韓国ゼミ合宿には、この演習の履修生も多数参加した。韓国現地では、やはり交流 校である高麗大を訪問して向こうの学生と交流するが、前年に武蔵に留学していた交換学生らと再会したりと、この演習を基点とした交流の幅もかなり広がってきた。また、武蔵の学生が翌年の韓国留学を心に決めたりするのも、この演習や9月のゼミ合宿への参加が大きく影響しているようである。来年の演習でも有意義な交流を期待したい。