人文学部ゼミブログ

2008.05.20

  • 人文学部
  • 英語英米文化学科

英語圏文化演習 (角田俊男)

この演習では英語が話されている地域(英国から近代にその影響・支配の拡大にともなって海も越えて英語が広がっていった地域です)の主に現代の文化の諸側面に関して、受講する皆さんの関心にも対応しながら、具体的なテーマを毎年決めて、図書館の本を読んで調べたうえで交代で発表し皆で疑問点を話し合って理解を深めていきます。また3年生が多く受けるので、翌年の卒業論文作成の準備となるように、レポート、小論文の書き方についても学びます。
 
も う少し具体的にここ数年の授業のテーマをいくつか説明しましょう。ある年には英国の食文化の歴史と現状を英語の文献や日本語の入門書などを読んで学びました。食は私たちの生活の基本であり、それはその時代と社会の自然環境・地理、農業と工業や景気など経済、食材の貿易など対外関係、女性の地位、家庭の構 成、社会福祉を担う国家など多様な事柄とも関わっていますので、食文化を通して英語圏文化の諸相に目を広げる窓口にもなります。有名な人物がどのようなも のを実際に食べていたか、貴族と労働者など身分・階級により同じ国民でも食生活はどのように異なっていたのか、さらには「英国の料理はおいしくない」という悪評はなぜいつから生じたのか、またその評判は今でも正しいのかなど色々面白い疑問点を明らかにしていきました。当初は東アジアからの高価な奢侈品として始まった紅茶(最初は薬またしばらくは緑茶だったそうです)が時を経て国民的な飲み物になっていったことからも分かるように、英語圏の世界的な広がりを 具体的に意識することができました。
 
別の年には特定の観光地の変化を題材にして、観光産業の展開を現代の文化的な問題として研究しました。ユネスコの世界文化遺産や博物館・テーマパークの増加など最近世界規模で目立って起きている現象はどういう意味を持っているのか、具体的な観光地の開発を調べながら、皆さんと考えました。受講生のなかにはそれ以前に実際に現地に観光旅行に行かれた経験のある人もいて、その人に経験を示してもらったりもしました。観光はその地域や国が自分に対してどのようなイメージを持ってもらいたいかというアイデンティティの問題とも関わり、例えば観光パンフレットからも政 治的経済的な戦略を探ることもできます。白い羊がのどかに草を食んでいる緑の牧場の田園風景が英国の観光イメージです。こうした風景を楽しむことを第一歩としながら、さらにその先に進んで、そうしたイメージを作り出して売り出す背後にどのような意図があるのか批判的に考えてみることで、これまで見えなかった事実が判ってくるなど、文化研究の面白さを味わうことができればと思います。