経済学部ゼミブログ

2025.12.16

  • 経済学部
  • 金融学科

宇宙事業のスタートアップ企業研究

ブログ投稿者:金融学科 准教授 中嶋 幹

スタートアップ企業に関するゼミでの議論
2年次の中嶋ゼミでは、テキストの輪読を通じた企業金融理論の学習に加え、実学に触れる機会にも力を入れています。その一環として、工場などの現場を見学し、教科書で学ぶ理論が現実のビジネスとどのように結びついているのかを、自分の目で確かめる取り組みを行っています。見学先はゼミ生が主体的に選定しており、今年度はJAXA筑波宇宙センターを訪れることになりました。

見学に先立って、ケース・メソッド教材を使って、宇宙関連のスタートアップ企業に関する議論を行いました。具体的には、その企業が不確実性の高い宇宙事業でどのように成功を収めたのかを話し合い、企業金融理論がどの場面で活かされているかを考察しました。さらに、「もし自分たちがこの企業の社員だったら?」という設定で、新しい宇宙事業を提案する仮想コンペも実施しました。いずれのグループも説得力のあるプレゼンテーションを展開する中で、印象的だったのはソニー社のSTAR SPHEREプロジェクトに着想を得た「宇宙セルフィー」の提案です。これは、超小型衛星に搭載されたディスプレイにユーザーの写真を送信し、地球や宇宙を背景にその写真を合成して撮影した写真を返送するサービスです。推し活や記念日など、大切な瞬間の写真を宇宙の視点から残せるというユニークなアイデアで、いつか実現する日が楽しみです。
H-IIロケットの実機の前で記念撮影
そして見学当日。宇宙飛行士養成棟では、閉鎖環境適応訓練設備や低圧環境適応訓練設備をガラス越しに見学し、宇宙飛行士になるための過酷さを実感しました。次に、「きぼう」運用管制室を訪れ、宇宙ステーションの映像や観測データを24時間体制で監視する様子を間近に見学し、運用の実際の一端を学ぶことができました。宇宙関連の最前線を目の当たりにし、好奇心が刺激される、学びの多い一日になりました。
最後に、ゼミ生の感想・コメントを紹介します。
・ケース教材を2週にわたり取り組み、宇宙の不確実性や宇宙でのビジネスの難しさを学びましたが、実際に宇宙環境を目の前に働く方々を見てより宇宙産業の難しさを感じました。
・事前学習を行ったことで見学ツアーの内容が入ってきやすく、さらに理解を深めることができた。宇宙事業は技術の進歩を生み出すだけでなく、新たなビジネスも生むことができるといった新たな視点を自分の中で見出すことができた。
・JAXAの施設や取り組みを見て、想像していたけれど改めて宇宙事業の規模や大きさに驚いた。高品質タンパク質生成実験の話はゼミでも触れていたので見学中に言及があってよかった。
・実際に働いているところや、リアルタイムのISSからの映像などが見られて、良い経験ができた。
・この見学のために学習してきてこともあり、興味深く見て回ることができた。宇宙飛行士養成エリアでは閉鎖環境適応訓練設備では複数人で1週間共同生活すると聞き、自分では難しいと感じた。宇宙での研究についてもタンパク質結晶化やマウスを使った骨の密度の変化など調べたこともあったが、宇宙空間では骨の状態が変化することは調べていなかったので、他にどのような変化が生じるのか気になった。きぼうの運用管制室を見せてもらったときは実際の空気感が感じられ、運用・管理のための様々な役職が想像よりも多く驚いた。JAXAでしか見られないようなことが見学でき楽しく、興味深かった。
・今回の見学で宇宙関連企業には、様々な課題や期待があることが分かりました。しかし、宇宙服だけで10億円かかると知り、他にも通信機器や研究施設などで莫大な資金が必要だと思うと、利益が出るのはまだまだ先なのかなと思いました。また、事業が安定していないのもあり、失敗するリスクもあるので、自分はこういった企業には就職、投資をする勇気は無いなと感じました。
・現地で実際に話を聞いたり模型を見たりしたことで、宇宙産業は初期投資が重く、失敗コストも大きいという話がちゃんと理解できた気がする。
・ISSきぼうと繋いで実験器具の不具合や実験の数値を24時間体制で把握していることが一番驚きました。JAXAの方々がとてもフランクでした。また、宇宙飛行士の訓練の閉鎖空間は漫画で知り、それを生で見ることができて感動しました。
・授業内で学習した高品質タンパク質結晶生成実験の内容も見学で触れられたのでよかったと思いました。また、授業で扱っていない内容での宇宙を活用し行われている実験も知ることができました。これら以外でもJAXAではどのような仕事をしているのか、ISSとの交信の場も見みることができて楽しかったです。
・生活とはかけ離れている宇宙関連の施設に見学しにいったのは初めてでとても興味深かった。事前に学習したタンパク質結晶についてもさらに詳しく学ぶことができた。
・ケース教材を通じて宇宙産業についてじっくりと時間をかけて勉強した私たちがJAXAを訪問し、そこで圧倒的なスケールに驚かされました。タンパク質結晶生成実験について授業で学習していましたが、実際にその実験の説明を受けて、科学の進化の可能性と宇宙技術の進歩に胸が踊りました!