経済学部ゼミブログ

2024.01.15

  • 経済学部
  • 金融学科

高知遠征

ブログ投稿者:金融学科 教授 徳永 俊史

私が担当しているファイナンス1・2の授業では、人々(家計や企業経営者など)が冷静に行動することを前提に、将来のお金で測定したそれら人々の満足度を高める方法を学びます。しかし、たとえ理論は知っていても、人はお金を目の前にすると冷静でいられなくなることがあります。この歪みに注目したのが行動ファイナンスです。2年生から4年生までの徳永ゼミの共通テーマは“行動ファイナンスの実践”です。授業で学んだ“伝統的な”ファイナンスを基礎に、世の中で起きているさまざまなお金にまつわる不思議な出来事を実際のデータを使って分析します。
私のゼミでは前年に行うゼミ生アンケートにもとづき1つの大きなテーマを設定し、それについてゼミ生全員で研究するスタイルをとっています。今年の3年生のゼミでは、2024年に新NISAが始まるということもあり、大学を卒業した後の人生設計に株式の長期投資がどのように影響するのかを考えることにしました。NISAの税制上の優遇措置は確かに魅力的ですが、それだけで今まで株式投資を敬遠していた人がいきなり株式投資を始めて大丈夫でしょうか?ゼミでは、“伝統的な”ファイナンス理論をもとに、NISA導入といった投資家側の環境変化だけでなく、企業経営者の意識変化も必要であることを示し、2023年の株式市場がそれらを正しく評価しているのか分析しました。そして、夏休み明けにある程度の成果が得られたので、どこかで発表してみようということになり、行動経済学会(12/9-10)での発表を選択しました。
<写真1> ポスターの最終仕上げ風景
行動経済学会には学部生が発表するポスターセッションがあります。今年の学会は久しぶりに対面での開催、しかも場所は高知(会場は高知工科大学)。“高知に行きたい!”という学生の声から(事前審査も無事通過し)学会発表が実現しました。私のゼミは3年前に参加したことがありますが、その時はコロナ禍でオンライン発表でした。対面での参加は、学生はもちろん私も初めてということもあり、ポスター作成に四苦八苦。<写真1>は、発表当日の午前に高知工科大学の教室を借りて最後の仕上げを行っている風景です。目の前に高知城が見える素敵な大学でした。
<写真2> 発表風景
さて、ポスターセッションでの発表は、いわゆる壇上でPowerPointを使って発表するスタイルではなく、ポスターを看板に貼り、目の前に来た学会参加者(先生や学生)に研究内容を説明したり、逆に質問を受けたりするスタイルです。最大のメリットは、時間を気にすることなく言葉のキャッチボールがはずむことです。今回は全国の大学から集まった30のグループが発表しましたが、ファイナンスを専門としている参加者は少数派なので、想定外の質問もあったり、また示唆に富んだコメントをいただいたり、学生にとってはとても充実した時間を過ごしたようです。<写真2>は、作成したポスターの前で説明するゼミ生の風景です。
<写真3> 反省会(?)風景
大学を出て対外的に発表することは、他大学で同じ行動経済学(や行動ファイナンス)を学んでいる学生と交流することができ、また他大学の先生から今後の研究活動に対するコメントをいただけるなど、学生が大きく成長することが実感できる貴重な経験だと思います。そして、終わった後の反省会も忘れずに。<写真3>は反省会(?)の様子です。さすが高知。鰹が想像以上に美味しく、お酒もすすみ・・・もちろん今後のゼミ活動についてしっかり意見交換を行いました。この経験を参加できなかったゼミ生や2年生の後輩ゼミ生に還元し、これからもさらに研究を進めます。