経済学部ゼミブログ

2022.07.27

  • 経済学部
  • 経済学科

身近な社会の問題を読み解くための準備

ブログ投稿者:経済学科 教授 田中健太

田中専門ゼミナールでは社会で解決すべき問題について、データを用いた分析によって、客観的かつ論理的な問題の原因の特定や、解決策の提案を行うことを目的として、ゼミナール活動を行っています。田中ゼミではグループごとに分かれ、自分たちで、テーマとする社会問題を選択し、そのテーマについてグループワークを通じて、学生たち自らのテーマに対する解決策や問題の原因の理解を行っています。同時に、基本的かつ統計的な分析方法をゼミのなかで演習として行います。
2年生秋学期以降に行うゼミナール活動の本格的なテーマ分析では、テーマとする社会問題に関するデータを自分たちで集めて、統計的な分析をもとにどのように問題を解決すべきか提案を行ってもらう流れでゼミナール活動を行っています。本格的な分析を始める前の春学期(4月)からゼミナール活動を始めた2年生は、各グループで自分たちの興味関心にもとづいて選んだ社会問題について、調べています。今回で春学期も最後の発表となり、これまでの成果をグループごとに発表してもらいました。
このゼミではデータ分析をするのだから、すぐにデータの分析を始めるのではないの?と思われる方もいると思います。しかし実際の統計分析をするうえでも、分析対象となる問題がどのように発生していて、どのような人たち、企業、自治体等の様々な経済主体がどのように関わりあっているかなど、背景となる知識がないまま、データ分析を行うことは非常に危うい側面があります。実際に対象とする社会の問題が起きている中で、分析対象となる経済主体がどのような行動の選択肢があるのか、問題の被害を受けている人たちがどのような属性(所得層、年齢層、家族構成など)を持った人たちなのか、事前に把握したうえで分析モデルを構築する必要があります。そのため、我々のゼミナールでは、まず起きている社会問題について十分な知識や情報を得たうえで、データ分析に基づいた客観的な理解を行っていきます。
しかし、実際に身近であっても、対象とする問題を理解するには多くの情報収集だけでなく、想像力が必要になることを日々学生との間のやり取りで感じています。例えば、地方の過疎化問題をどう解決するか?というテーマに取り組もう!というグループがいたとしても、いざ考え始めると、実際の地方の現状がどのようなものか、イメージがつかず、単純に政府が行っているこの施策が良さそうだ!と発表で報告してくれることが多々あります。実際の地方の状況を想定して、こんな問題点はないのか?という質問すると、「考えていませんでした」という回答が返ってきます。実際の問題を自分たちのなかで十分に理解するために集めた情報をそのまま受け止めるのではなく、問題の本質を考え続ける力をこれからのゼミで養っていってほしいと日々思っています。まだまだ始まったばかりの専門ゼミナールですが、学生たちと、お互いに考え、自分たちで新たなものが見える喜びをお互いに共感していきたいと思います。