経済学部ゼミブログ

2021.08.27

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「経済学部のゼミで工作?」

ブログ投稿者:経営学科 教授 竹内 広宜

写真1: 説明書(英語Webページ)を見ながら部品を確認する様子
私の専門は先進情報通信技術(最近世の中に浸透しつつある、人工知能:AI技術も含みます)の活用です。ですが、理系の学部ではなく経済学部ですので、ゼミでは、あまり細かい技術の詳細にとらわれず、技術に関する様々なテーマについての課題をグループで取り組んでいます。その一環で、技術に関する新しいモノやコトを実際に触れ、わかったことや考えたことをグループでまとめるという活動も行なっています。これまで、AIスピーカー、スマートライト、スマートディスプレイ、ARプログラミング、ドローンなどをゼミメンバーと一緒に触れ、その活用を中心に様々な視点で議論をしてきました。
 
これまでの活動では、「出来上がった製品」に触れてきましたが、今年度の専門ゼミナール第2部(3年生ゼミ)では、それを一歩進めて「自分らで作ったモノを動かす」とことに取り組みました。具体的にはAIY(AI by Yourself)と呼ばれる市販の組み立てキットを学部のゼミ予算で購入し、それを4人1組で組み立てていきました。組み立て手順は英語のWebページのみのため、スクリーンにうつされた内容を各チームで読み解きながらの組み立てです。「この部品に表と裏の区別はあるのか?」「配線はこれで正しいのか?」とワイワイしながら、ステップごとに担当者を変えながら組み立てていきました(写真1)。
 
完成したAIYはカメラとボタンがついた小さな箱です。ボタンを押すと、音が鳴り、カメラが作動するのですが、撮影結果をみる画面がついていないので、何が起こっているのかがわかりません。しかし、このAIYは実はRaspberry Piと呼ばれる小型のコンピュータが内蔵されています。ですので、小型モニタ、キーボード、マウスを接続するとモニタに画面が表示され、マウスやキーボードが使えるようになります(写真2)。こうして、AIYを動かして何が起こったのかを調べられるようになりました。
 
AIYの中ではAIの重要な要素技術である画像認識アプリが動いています。具体的にはカメラで撮影された画像の中で人間の顔を見つけるとその部分を四角で囲みます。自動運転などで歩行者や前方の車を認識するものと同じ仕組みです。実際にAIYで認識した結果をモニタに表示させ、ゼミ全体で確認してみました。 

すると、いくつかの画像で「全然検討違いのものを認識している」や「人がいるのに認識していない」ということに気がつきます(写真3)。これらはそれぞれ偽陽性(認識してはいけないものを認識する誤り)、偽陰性(認識すべきものを認識できない誤り)と呼ばれる現象です。これは、新型コロナ感染症の検査でも生じる現象であり、それぞれの誤りを少なくしたいが、両立させることが困難であることをゼミの中で説明しました。すると、自動運転におけるリスクについて「標識を間違って認識したら?」「自動運転で認識すべき歩行者を認識できなかったら?」というように偽陽性・偽陰性のそれぞれの視点から議論ができるようになりました。これが、実際に動くものを体験が腹に落ちる理解に結びついた瞬間だ、と私は実感しました。
 
実際には、組み立てる過程で何らかしらの間違いがあり、組み立てたAIYがうまく動かなかったチームもありました。そういった残念なことが起こることも、実際に作る経験をしないとわかりません。作ったものが動く喜び、ちょっとした不注意により作ったものが動かなくなる現実など、様々な経験ができたゼミ活動となりました。これからも、新たな気付き・知的発見ができるゼミ活動を続けていきたいと考えています。
 
  • 写真2:AIY(左下)に小型ディプレイ、キーボード、マウスを接続した様子。ディスプレイにPCと同じような画面が表示されると歓声があがった。
  • 写真3:顔認識の結果例。左の結果では人がいるのにその顔が認識されておらず、右の結果では間違った場所が顔だと認識されている。