経済学部ゼミブログ

2011.09.29

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下川ゼミは、実は言われている程キビしくない

ブログ投稿者:経営学科 下川拓平

のっけから私事で恐縮だが、下川自身、学部時代も院のときもコミュニケーション能力、資格のための知識、人脈、といった、「大学のゼミ」に付随するであろう「御利益」からは程遠かった。そのかわり、徹底して内省、内観をおこのう態度、スタイルというのが、あの当時、確立した。そうしてそれは、ある種唯一の、自身の拠所であったし、それを実践して今に至るわけ。結果として、ゼミの内容も方法論も、それが反映される。
 
「『コミュ力』をつけたい!」「資格の勉強がしたい!」「人脈をつくりたい!」。。。。。
 
といった要求に一定のレベルで答えるのが、大学のゼミには必要、という向きがあれば、もっと「良い」ゼミがある、と、まずは申しのべておく。(一点、情報処理関連の資格については、ゼミのコンテンツの性質上、有利やもしれない。)
 
さて、そのコンテンツ(というか活動内容)。現在、専門ゼミ1~3までのゼミ生に、わたしが「指導」している事は、(いまあらためて頭で整理してみると)実は多岐にわたる。
 
専門ゼミ1: 輪読。 “Strategy: An Introduction to Game Theory, 2nd Edition ” by Joel Watson , W.W. Norton & Company, Inc. 。 比較的あたらしい、ゲーム理論の教科書。ゆっくりやってるし、まだそんなに大層な事まで至ってないが、むずかしいかね? それにしても、横道にそれるケースが多すぎる。(わたしの反省。たとえば、いつのまにか放射能についての講義になったりしてしまうし、なんかギャンブルの話になってしまって、ある種のギャンブルで当てる確率が Poisson 分布にしたがう事を「証明」したり。先にすすまんよ!)
 
専門ゼミ2: 鈴木光男、武藤滋夫著 「協力ゲームの理論」(東京大学出版会)の、「安定集合」の部分から。 院生むけに書かれた本なので、かなりゆっくり。基礎概念(特性函数型ゲームおよびコア)については、教科書をつかわずに、下川が昨年度講義した。(夏季強化ゼミ施行。)で、このゼミ、昨年のゼミ大会では、地方自治体をサーベイして議会の会派勢力のデータを取得、これをもとに Shapley – Schubic index を計算するプログラム(これはさすがにわたしがインプリメントして提供。開発環境は OpenOffice のマクロ。)を駆使して分析をした結果を発表した。 発表者が「なんか全然わかってもらえませんでした!」と元気に事後報告していたのが、ほほえましかった。 さて、今年も「ゼミ大会」参加、見切り発車なんだが、どうしたものか。。。。
 
専門ゼミ3: この世代、一人ひとりに対応せざるを得ない事情がある(詳細は、個人情報になるんで割愛)。 要求パターン1: あるゼミ生に、ある本を紹介してみた(具体的には、高橋昌一郎著「理性の限界」)。 即くいついてきて、あの Kenneth Arrow の Impossibility Theoremに興味をもちはじめた。現在、「3人投票ゲームにおいて、Arrow の条件:Independence of irrelevant alternatives をおいた場合に、何がおこるかを、かなり具体的に「計算」してもらっている。無論、Arrow のこの定理はユニバーサルだから、これをやっても意味がない、といわれるやもしれない。しかし、「定理の解剖学」は、事が重大である場合(とくにこの場合、「民主主義なんか存在しない」という破壊的なステートメントを含意するから)世人があまねく理解した方がこのましいという点で意味がある。要求パターン2:まず 「計算理論、つまり λ-Calculous(表示的意論)、Turing Machine といった、計算の根本理論を勉強したい、と。。。。 おいおい、それではまず集合論、論理学の基礎は大丈夫か、といえば、「大丈夫です」。 圏論なんかも必要になるぜ、といえば、「やります」。 更に彼は、コンピュータの「オペレーティングシステム」について、とにかく勉強したい、とも。そうか。。。わたしは実は経済学者ではなく、このあたりの専門であったのを「かぎつけて」いて、ある種当然の筋として「ここに流れついてきた」クチか。よろしい、了解した、そういうのには随分と出会ってきた。では訓練開始だ。。。。 。。
 
ここまで読み終えて、「いったい全体このゼミは何やってんの??」な感想は、 。。。うん、しかたない。
 
はたから見た場合のその「問題意識」をここで解説しはじめると。。。。ある種の入門書が一冊書けちまう。 あ、ちょうどよい。上記で紹介した本「理性の限界」は、もしかしたらこのゼミを理解するための、よい「参考書」かも。(まあね、自分で書かなきゃ。。。)