経済学部ゼミブログ

2010.07.20

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世界一の借金国と金貸国はどこだろう?

ブログ投稿者:金融学科 黒坂佳央

世界一の借金国と金貸国はどこだろう?
世界で一番お金を貸している国、世界で一番お金を借りている国は、日本、米国どちらでしょうと授業で質問すれば、必ず返ってくる答えは、世界一の金貸国が米国で、世界一の借金国が日本というものです。しかし、事実は全く正反対です。2009年末のデータでみると日本の対外純資産残高は266兆2,230億円という世界第1位の大きさであるのに対し、2008年末のデータで314兆8,299億円という対外純負債残高を抱えた世界一の借金国が米国なのです。対外資産残高とは一国が外国で保有している資産の総額、他方対外負債残高とは一国が外国に負っている負債の総額、したがって対外純資産残高とは対外資産残高が対外負債残高を上回る対外資産残高、対外純負債残高とは対外負債残高が対外資産残高を上回る対外負債残高の大きさをそれぞれ意味することになります。
 
2010年6月11日 第174回通常国会において、第 94代、61人目の首相に就任した菅内閣総理大臣は所信表明演説を行い、『最小不幸社会』の構築という理念を掲げました。ドイツの文豪ゲーテは『イタリア紀行』の中で、「十分なものを所有しながら、それを使用することも享楽することもできない人をこそ、貧困にして不幸なものというべきである!」と述べています。ゲーテの表現を借りて現在の日本経済における最大の不幸を記述すると、266兆2,230億円という世界第1位の対外純資産残高を保有しながら、1991年のバブル崩壊後約20年に及ぶ経済の低迷状態から完全に脱却していないことといえます。2009年の完全失業率は5.1%と前年より1.1ポイント上昇し、完全失業率の値が5%台となるのは2003年の5.3%以来6年ぶりで、上昇幅は過去最大でした。このような低迷状態は、偉大な経済学者ジョン・メイナード・ケインズが「豊富の中の貧困」と名付けた状態そのものです。
 
3年生を対象とした私の専門ゼミナール2では、世界第1位の対外純資産残高を持つ日本経済が如何にすれば長期低迷状態を脱却することができるかについて学んでいます。写真は,その第1歩として,日本が海外でどのような形で所得を獲得しているのかを,統計を用いて発表している様子です。このゼミログを読んだ経済学部をめざす諸君には、世界第1位の対外純資産残高を保有している日本経済を甦らす方策にチャレンジしてほしいと思います。