経済学部ゼミブログ

2009.08.05

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「裁判員制度」始まる

ブログ投稿者:経済学科 木下富夫

「裁判員制度」。
 
高校生のみなさんも、テレビや新聞で、この話は聞いていることでしょう。みなさんは、「自分たちには関係がない」と思っているかな?いや、そんなことはありません。5年後には、みなさんも裁判員に選ばれるかもしれません。
“歴史的”と言っても言い過ぎではない「裁判員制度」が今年の5月に始まりました。これは旬なテーマだと考えてゼミで取りあげました。一年生にはやや重く、希望者は少ないかと心配しましたが、意外にも関心が高く、ゼミの定員が満たされました。
 
ゼミの初回に「12人の怒れる男たち」というアメリカ映画を見て、皆に感想を書いてもらいました。この映画は、陪審裁判をテーマにした有名な映画です。ス トーリーは、ある殺人で起訴された容疑者が、陪審員(アメリカでは12人)の評議の結果、かろうじて無実になるというものです。最初は11人が死刑を支持 していて、たった一人だけがその容疑事実にかすかな疑問を持っていたのですが、評議を繰り返すうちに、その一人の疑問が残りの11人の考えを変えることになるのでした。(みなさんもレンタルビデオで見てください。)
 
ゼミ生の裁判員制度に対する意見は様々で、以下のようなものでした。
(1) 裁判は法律の専門家にまかせておけば良いと思う。
(2) 暴力団の裁判だったら仕返しが怖い。
(3) 死刑反対論者だが、裁判員になれるだろうか?
(4) 会社を休んでまで行くのは大変だ。正社員ならともかく、派遣社員だったら?
 
その後、なぜ裁判員制度が始まったのか、というもっともな疑問がでてきて、そこから「裁判員制度は冤罪事件を無くせるか」という問題に移りました。ちょうどこのころ、足利事件で無期懲役判決を受けた菅谷さんが冤罪であることが報道されたのです。菅谷さんは警察に長い間拘留されて、無理やり自白させられたら しいのですが、これに対してある学生から、「自白しなければいいじゃないか、自白する方が悪い」という意見がでました。そこで、私から「警察に拘留される と何日間、留置場に入れられると思う?」と皆に質問しました。これには誰も答えられないだろうと思っていたら、ある学生から「23日」ですという答えが返ってきてびっくりしました。
 
さて、裁判員制度は冤罪を減らせることは出来るかもしれませんが、絶対ではないのです。米国では有名な「サッコ=ヴァンゼッティ」事件(1920年)というのがありました。二人は無実の罪で、電気椅子による死刑に処せられましたが、40年後に名誉が回復されます。
 
最後になりますが、裁判員裁判の意義を知るには、日本史と世界史の勉強も必要ですね。陪審裁判はすでに古代ギリシアにもありました。そして、今日の陪審裁 判の期限はNorman Conquest of Englandに遡るそうですよ。そして、‘もし’明治末に起きた大逆事件のときに、裁判員制度があったら幸徳秋水は助かったかもしれません。民主主義と 裁判員裁判は根っこで繋がっているのでしょうね。