経済学部ゼミブログ

2008.07.15

  • 経済学部
  • 経営学科

“知る”を楽しむ

ブログ投稿者:経営学科 坂井映子

知るを楽しむ
写真は3年生のゼミの風景です。私のゼミの2、3年生は、毎年秋に明治学院大学の3、4年生のゼミと合同ゼミを行っています。写真の彼らは昨年2年生のときに初めて参加して、3、4年生の議論に圧倒され、今年の自分たちは頑張るぞ!と奮起しています。
彼らが設定した今年のテーマは、「金融商品の評価をめぐる議論の変遷」です。現行の制度会計のもとでは、投機目的で保有する金融商品は時価評価する一方 で、企業の事業活動とリンクさせた長期的な収益獲得を目的とする金融商品については時価評価する必要はないとされています。しかし、最近では保有目的に限らずすべての金融商品を時価で評価しよう、という議論も出てきています。そこでどういった経緯で全面時価評価という議論になるのか、そもそものところを調 べてみよう、ということになったのです。
出発点として、私がある本*の一部をコピーして渡しました。まずそれを一人がまとめて報告し、アメリカで はどうも1980年代に、S&Lという長期の住宅貸付を専門とする貯蓄機関が破綻したときに金融商品に関する情報開示のニーズが高まったらしい、 ということを知ります。次に、なぜS&Lは破綻し、その結果具体的にはどういう情報が必要になったのだろうか、という疑問が沸いてきます。その一 方で、住宅貸付といえば、最近サブプライムローンの問題もあったなぁ、サブプライムローン問題とS&Lの問題は同じなのだろうか、違うのだろう か。違うとしたらS&Lのときとはまた異なる情報開示が求められるのだろうか。そもそもサブプライムローン問題ってなんだろうか。サブプライムローン問題を調べてみると「債権の証券化」という話が出てくるが証券化って何だろう…。次々と疑問がでてきます。そして、次々出てくる疑問の答えを、かわ るがわるゼミ生が自発的に調べてきて報告してくれます。
一見会計とは関係のないことまで調べているように見える彼らですが、今彼らが調べているこ とはとても大事なことなのです。企業の成績表ともいえる財務諸表の会計数値は、企業が行う経済活動を数値に変換したものです。投資家や債権者などの企業を とりまく利害関係者はこの成績表を利用して、投資や貸し出しに関する意思決定を行います。つまり「会計」について理解を深めるには、会計が反映しようとす る経済実態や、会計数値を利用する投資家・債権者と企業の関係を理解する必要があるのです。(もちろんそのためにはミクロ経済学、マクロ経済学、ファイナンスといった経済学部で学べる会計学以外の分野も勉強しておかなければなりません!)ですから、金融商品の会計上の評価問題を考えるにあたって、サブプライムローンや証券化の仕組みなどをじっくり調べることは決して余計なことではないのです。
疑問に思ったことを自分たちで解決していくことの面白さ、物事を分析する道具としての経済学の面白さ、そしてただの金勘定ではない会計の面白さを、インゼミ発表の準備を通じて体感してほしいと思っています。
*米国財務会計基準(金融商品)研究委員会編(1995)、『金融商品をめぐる米国財務会計基準の動向 : 基準の背景と概要 』、企業財務制度研究会