経済学部ゼミブログ

2008.06.27

  • 経済学部
  • 経営学科

有価証券報告書を読む

ブログ投稿者:経営学科 鈴木稔

教養ゼミについて、ここでは書いてみようと思う。経営学科の教養ゼミは、何らかの課題を定め、調査を行い、レポートにまとめて発表することをほぼ共通の内容としているが、具体的なテーマや運営方法はゼミによって異なる。私の担当するゼミでは、実際の有価証券報告書を読むことにポイントをおいている。
 
有価証券報告書とは、証券取引法(現在の金融商品取引法)の規定にもとづいて、公開の市場で売買されている有価証券(株券や社債券など)を発行する会社が、事業内容について毎年度作成し開示する報告書である。それには売上高・当期純利益・従業員数など主要な経営指標の推移や、沿革、研究開発活動、大株主の状況、配当政策、役員の状況、そして財務諸表等、事業の内容に関する各種の重要事項が記されている。うそ・偽り等があれば証券取引法(金融商品取引法)違反として問われることになる。大株主の状況を偽った西武鉄道の事件、ライブドアやカネボウの粉飾決算事件などは、いずれも有価証券報告書の虚偽記載に絡む事件であった。
 
このような報告書の存在は社会的にも知られるところとなったが、実際にそれを読む人々はそれほど多くはないかもしれない。ひとつの報告書で150頁前後、内容も、とくに経理の状況(財務諸表等に関する部分)など理解するのは容易ではない。それを(原則として経理の状況の部分は除いて)、あえて1年生の教養ゼミで読もうという訳である。もっとも、ただ読むというのでは興味をもてないであろうから、グループを編成し、グループごとに特定の会社を選び、その会社について有価証券報告書を手がかりに調べ、調査結果をレポートにまとめて発表する、ということで実施した。
 
有価証券報告書は今日では電子データ化されEDINETで閲覧できるが、幸い、いっそう使い勝手のよいオンライン・データベースを利用できる。そこで、4月にまずは大学図書館でゼミ単位のガイダンスをうけた。新聞、雑誌、著書等の検索方法や図書館全般の利用方法も学んだ。5月以降は、グループごとにコンピュータの端末でデータベースにアクセスして調査対象会社のデータを集め、読み込みを経て、レポート作成に取り組んできた。授業のはじめとおわりには全員集まっての打合せ等を行うが、あいだの時間はグループごとの活動にあてられた。また、毎時間メモを残してもらうが、活動内容は学生の自主的判断に委ねてきた。
 
今年度、学生たちが選んだ会社は武田薬品工業、アサヒビール、美津濃、明治製菓、資生堂、本田技研工業の6社である。いずれもよく知られている会社であるだけに、学生には、会社の基本的事項をきちんと押さえたうえで(少なくとも5事業年度の報告書は見る)、何をポイントとして発表するかを意識して調査を進めるよう要望した。多くのデータから会社を特徴づける情報を引き出すのは実際容易ではない。さまざまな質問も作業途中であった。しかし、国際的市場での競争、競合他社との比較、水着を巡る問題、セグメント情報、会社防衛策の問題などに触れた、興味あるまとめができつつあるようである。明日からのグループの発表に期待したい。