社会学部ゼミブログ

2025.06.23
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今こそ、本を読もう
ブログ投稿者:社会学科 教授 菊地英明
皆さんは、この1か月に本を何冊読みましたか?
政府の第22回「21世紀出生児縦断調査」(2001年生まれの人を追跡した調査)によれば、2001年生まれの人の22歳時点(=大学4年生等)で、全体の過半数が月0冊、要するに読書をしないという状況が明らかになっています。
社会学を含む文系の学問の基本は読書です。しかし、学生が本を読まないことは大学教員共通の悩みです。本離れは最近始まった話ではなく、今ではマンガ離れすら起きているようですが。メディア環境も多様化しており、スマホから手軽にアクセス可能な動画、SNSの方が身近になるのも無理のない話です。
ただ、書籍(紙)が眼中にないのはかなり問題です。インターネット上にない情報の中にも重要なものはたくさんあります。どこの大学でも、レポート等を書くに当たり、検索で出てきたPDFファイルしか読まない学生が問題になっています(そこに最近では、生成AIとどう付き合うかという問題も加わりました)。
かくして、多くの教員は、特に大学に入ったばかりの学生さんに、本を読もう、と啓蒙し、どのように読書を動機づけるか、手を替え品を替え取り組んでいます。
・ビブリオバトルとは
前置きが長くなりましたが、ここから本題です。私が担当する初年次ゼミでは、1年生は入学してから3ヶ月が経ち、少しずつ大学での生活に慣れてきた頃のようです。1年ゼミでは、比較的少人数のクラスのもと、まずはゼミ生相互が仲良くなることからはじまって、授業の受け方を含む、一通りの「お作法」を最初の半年で楽しく学びます。
その一環として、本に親しんでもらうために、「知的書評合戦ビブリオバトル」を毎年実施しています。これは、いわゆる出席者がお気に入りの本を持ち寄り、その魅力をプレゼンテーションした上で自由かつフレンドリーに質疑応答する、一種の「書評会」です。ルールが体系化されており、それなりの歴史の積み重ねがある取り組みですので、高校等で行った経験をお持ちの方もおられるかもしれません。
・いざ、実施
先日実施したビブリオバトルでは、班分けをして予選を行い、5冊の代表が本戦に進みました。そこでは、聴いた人に「その本を読みたい」と思ってもらえるような魅力的なプレゼンテーションを5分間で行います。その後で数分間で自由に質疑応答を行いますが、発表内容に引き込まれて、思わずネタバレにつながりそうな質問が出ることもしばしばです。それを何とか押しとどめようとする発表者との駆け引き(これこそ「バトル」)も面白いところです。
聞くと、やはり読書の習慣がない学生が多いようで、はじめて図書館で本を選ぶ楽しみを知ったとか、これまで「積ん読」になっていた本を引っ張り出してきたといった人がいました。
さて、候補本の書誌情報は写真をご覧頂くとして、投票の結果選ばれた「チャンプ本」(「読みたい」という評価が最も高かった本)は
森絵都,2007,『カラフル』文藝春秋社.
でした。プレゼンテーションがすばらしく、私も是非読みたいという気持ちになりました。今回の企画が、一人でも多くの学生さんにとって、読書を楽しむきっかけになればと思います。ただし(!)社会学部の教員としては、同様の企画を今後も行うならば、学生が候補に挙げる本に、社会学の本が一冊も多く加わることを祈りたいところです。
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予選の風景。本の魅力を語った上で、和やかに質疑応答します。 -
班ごとの予選を勝ち抜いて、本戦に進んだ5冊の本 -
本戦実施中。本の魅力を熱く語っています。