社会学部ゼミブログ

2026.07.17

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データで街の魅力を競う「シビックパワーバトル」

ブログ投稿者:メディア社会学科 教授 庄司 昌彦

 庄司ゼミでは、3年生になって最初に取り組むグループワークとして「シビックパワーバトル」を行っています。これは、オープンデータ(だれでも自由に使えるように公開された行政などのデータ)を使って自分たちの担当する街の魅力を発掘し、ほかの街と比べてどこが優れているかをプレゼンテーションで競い合う、いわば「データを駆使したプレゼンバトル」です。デジタル庁のデータ活用事例集にも掲載されているこの取り組みを、私のゼミでは2019年から毎年続けており、今年で8回目になりました。
 17名の学生は、大学のある練馬区、となりの豊島区・中野区、そして私が関わりの深い江戸川区の4区のチームに分かれ、今年のテーマ「20代にとって魅力的な街」についてアピール内容を考えました。SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threatsを整理する手法)やペルソナ(具体的な人物像)の設定という手法を用いつつ、政府統計の総合窓口(e-Stat)や内閣府の地域経済分析システム(RESAS)のデータ、各区が公開するオープンデータなどを探索します。でも、ただ数字を並べても勝てません。たとえば図書館の「数」だけなら人口規模の大きな区が有利ですが、「人口あたり」に直すと結果はガラッと変わる。どの指標で比べれば自分の街がいちばん輝くのか、ということを必死に考え、ときには自分で新しい指標を作り出すのが、このバトルの醍醐味です。
 自分たちの街の強みをアピールするには、じつは相手の街をよく知らなければなりません。相手の強みや弱みを調べてはじめて、「ここなら勝てる」という比較ができるからです。そうして調べるうちに、担当した区だけでなく、相手の区のことにも詳しくなっていきます。そして、今年のプレゼンでもさまざまな工夫が見られました。家賃の安さに「推し活」のための交通費や移動時間といった要素を掛け合わせて「オタクにとっての住みやすさ」を示したチーム、気象データをQGIS(データを地図上に表現する地理情報ツール)で可視化し、自分たちの区がほかより暮らしやすいことを示したチーム、実際に街を歩いて、データだけでなく自分たちの実感からも魅力を伝えたチーム、生成AIで"架空の20代"を作り、その人と一緒に街歩きをする動画で魅力を語ったチーム。多種多様なデータを駆使して、しかもチームごとにまったく違う切り口が生まれることが、私はとても面白いと思っています。
 
 発表は1チーム10分で行い、その後に10分の質疑応答を行います。質疑にもプレゼンと同じだけの時間を取っているのは、私が「質問する力」をとても大切にしているからです。鋭い質問は相手の論理の穴を突き、発表する側にも、される側にも学びを生みます。とはいえ、いい質問をその場で組み立てるのは簡単ではなく、学生たちが毎年いちばん苦労するところでもあります。採点は「データに基づいているか」「論理が明確か」「独創的か」の3つで、参加者全員が自分のチーム以外のいちばん優れた発表に投票して勝敗を決めます。当日は卒業生や自治体の職員の方などもゲスト審査員として加わってくださり、「自治体職員として新鮮な見方だった」といった嬉しい感想もいただきました。
 この活動でいちばん伝えたいのは、データや指標は「与えられて使う」ばかりではなく、「自分で探し、選び、必要であれば自分たちで作り出す」ものだということです。また、データ活用は、一人で完結する作業ではありません。仮説を出す人、データを探す人、分析する人、見せ方を工夫する人、進捗を管理する人、チームの雰囲気を盛り上げる人(笑)……と役割を分け合い、助け合って一つの発表を作り上げていきます。本番が近づくとグループ内の連絡が急に増え、授業時間外にも集まって、すごい集中力で準備が進んでいきます。こうした経験をすることが、実践的なデータ活用の学びになっていると考えています。
 この「シビックパワーバトル」のように、庄司ゼミではデータに基づいて論理的・科学的に語ることと、新たな切り口で社会を理解することについて、楽しみながら身につけていきます。