社会学部ゼミブログ

2012.12.09

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ポピュラーカルチャーに浸る

ブログ投稿者:メディア社会学科 南田 勝也

メディア社会学科の南田3年ゼミでは、「作品批評」を行っています。社会学部のゼミなのに文芸批評のような学修をする。このことには意味があります。

 

南田ゼミでは「ポピュラー文化から社会を見とおす/社会からポピュラー文化を見わたす」をテーマに運営していますが、ゼミ生たちには、自分が好きだからという理由でポピュラー文化を研究するのではなく、それを好きと思うことのできる社会的な背景や構造について考察を深めて欲しいと願っています。社会学は社会の観察を主眼とします。社会を分析するわけですから、自分自身の当事者性はいったん保留して、もしくは当事者性すらも観察の対象として、(社会)科学的で客観的な態度に徹するよう学ぶわけです。

 
しかし、表面的な理解のみで社会学に接すると、単なるニヒリストになってしまうとも感じています。ゼミテーマを例に云うと、文化作品が人を魅了する魔力のようなものには触れずに、シニカルに「この作品が売れたのは○○だからなんだよね」と「分析」してしまうようなものです。

 
そこで、はじめに、文化作品のあつかいに長じている人文学の歴史的な方法論に依拠して、作品の内実に迫ります。具体的には、実際に自分の好きなジャンルや作家や作品について、印象批評やフォルマリズム、構築主義批評、ニューヒストリズムなどの文学理論を駆使して批評をしてもらいます。受講生はもともとサブカルチャーが好きで当ゼミに入ってきていますから、作品への偏愛ともいうべき感情を経験しているはずです。その経験をいま一度思い起こし、批評文として記述してもらいます。

ポピュラーカルチャーに浸る
今年は四つの班ができました。まずは音楽班。Mr.Childrenの音源を持ち寄って、歌詞について、楽曲構成について、桜井和寿の作家性について、など、アルバム『深海』を中心にメモしているところです。
ポピュラーカルチャーに浸る02
次は映画班です。中島哲也監督作品をあつかうことに決め、みんなで観てみようということで『嫌われ松子の一生』を鑑賞しています。中島監督の独特の映像美や、ストーリー展開などについて思いをめぐらせています。
ポピュラーカルチャーに浸る03
そしてACG班。アニメ・コミック・ゲームの総称ですが、この班は『新世紀エヴァンゲリオン』および庵野秀明監督を題材にして、映像や出版物と格闘しているところです。エヴァは大量に分析本がありますから、先行研究を押さえるのも大変です。
ポピュラーカルチャーに浸る04
最後が小説班で、王道と云うべき三島由紀夫を選択しました。はじめて三島由紀夫作品にちゃんと触れるという学生もいましたが、彼の過激な生き様と、純文学からエンタメ小説まで幅の広い作品群に、大きく刺激を受けていました。
こうした過程を経て、書きためた論評を編纂し、本年度は『窓から這い出せ——ポップカルチャー批評集』とタイトルをつけて発行しました。
その後、ゼミ生たちは、社会学的なポピュラー文化の分析手法を学び、それら作品が生産・流通・消費されていく社会のメカニズムについて検討するプログラムに取り組むことになります。イマニュエル・ウォーラスティンは云いました。「学問を修めるならば専門分野をふたつもて」と。