リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ
2026.03.03
- 総合科目
総合科目「地域連携ワークショップ」(集中授業)
ブログ投稿者:リベラルアーツ&サイエンス教育センター(LASEC)教授 踊 共二
この授業は学部学科の違いを超えて必要とされる幅広い知識と実践力を養うための「総合科目」のひとつです。具体的な目標は、武蔵大学と連携協定を結んでいる地方自治体のさまざまな課題を現地で知り、履修者たちが自分自身の暮らす地域社会のことも念頭におきながら解決策を考えることです。授業の中心は北海道中富良野町での現地体験です。参加者は11名でした。以下の3名が編集委員としてこのブログ記事をまとめました。
三原愛佳(経済学部経営学科2年)
粕谷羽桜(人文学部日本・東アジア文化学科2年)
高橋日菜(人文学部日本・東アジア文化学科1年)
初日(1月19日)
◇旭川空港から中富良野へ。町役場でオリエンテーションを受ける
屋外はマイナス10℃なのに室内は強力な暖房で暑いくらい。宿泊施設の窓からは雄大な十勝岳連峰を展望することができ、胸が高鳴る。
屋外はマイナス10℃なのに室内は強力な暖房で暑いくらい。宿泊施設の窓からは雄大な十勝岳連峰を展望することができ、胸が高鳴る。
2日目(1月20日)
◇石神家の農場を訪問。農機具・畑・ビニールハウスなどを見学
とにかくトラクターが大きい。タイヤは飛行機なみ。「試乗」したのはみな生まれて初めて。作付面積は30haで米(ゆめぴりか)・玉葱・白玉葱(雪景色)・小麦・スイートコーン・にんにく・長ネギ(北の匠)などを生産。大規模化・合理化の模範のようなファーム。ビニールハウスのなかでいただいた豚汁とおにぎりの味が忘れられない。農家はみな、後継者をどう見いだし、育てるかが課題。機械化・合理化にも限界があるから、短期間の体験企画などを繰り返し実施し、新規就農者を募るしかないだろう。
◇環境保全・ごみ処理の現状と課題を知るために施設を見学
雪の中の埋め立て地を見学。雪に埋まったごみを見るのは初めて。神秘的にも思える光景。しかし、ごみが分解されて土に還るには長い年月がかかるから、埋め立て地もやがて限界がくるとのこと。ゴミ処理場も見学。作業は合理的で計算しつくされていた。資源ごみなどの地道な分別が環境の維持に直結することがよくわかった。
◇中富良野町郷土館を訪問
町に伝わる津軽獅子舞の展示。オスの獅子頭には満月、メスの獅子頭には三日月が描かれている。それから獅子には鹿の角が! 農具や熊のはく製、野の開拓と歴史がわかる映像コーナーなど、幅広い展示を見ることができた。ここには児童館が併設されており、子どもたちが過ごす場と町の歴史と文化を知る場が同じ空間にある点が素敵だと思った。
◇小学校と中学校を併せた新しい義務教育学校「なかふらの学園」を見学
児童生徒数の減少に対応した試みだが、校舎は夢と工夫に満ちている。温もりのある木をふんだんに使った教室や体育館は快適そのもの。子どもたちが故郷の風景を目に焼きつけることができるように、大きな窓からは中富良野の絶景が展望できる。こんな学校で学んでみたかった。
3日目(1月21日)
◇自然観察:北星山森林公園でスノーシュー歩き
道なき道を進むと冒険心がくすぐられる。サラサラの粉雪(パウダースノー)は驚くほど軽い。遮るもののない360度のパノラマは、写真や動画では決して伝わらない圧倒的なスケール感。太陽の光を浴びてキラキラ輝く雪原と空の青さのコントラストは北海道の冬でしか味わえないと思う。雪に覆われた植物や動物の足跡についての説明も記憶に残った。装備がしっかりしているので、雪の上に横たわっても寒くない。
◇獣害対策の学び:猟友会ハンターを囲んで
見せていただいたのは、実際に仕留めたヒグマの写真やその凶暴さを物語る頭蓋骨。そして実際に使われた銃弾。目の前に置かれた「野生の証」に私たちは圧倒された。書物や映像では伝わらない「命のやりとり」の生々しさを知った。命を懸けて山に入るハンターの言葉には独特の凄みとかっこよさがあった。それは自然を征服するのではなく、理解して対峙するプロフェッショナルとしての矜持だ。
◇町長との座談会:首長とスタッフのリーダーシップが町を元気に
住み続けられる町づくりについて話し合った。小松田清町長ほか、町の皆さんが笑顔で迎えてくれた。その歓迎の空気に背中を押され、私たちはこの数日、五感のすべてを使って把握してきた中富良野の価値を精一杯の言葉で率直に共有した。感謝の気持ちを込めて。
最終日(1月21日)
◇メロンやキャベツ、ジャガイモを育てる遠藤ファームを見学
広大な畑に立ち、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みながら、雪中に保存されたキャベツを収穫。大玉のキャベツは想像以上に重かった。じゃがいもの食べ比べも体験。品種によって甘みや食感が異なることを知り、農業の奥深さを知った。採れたての野菜を使ったポトフやフォカッチャをご馳走になり、素材そのものの味わいを堪能することができた。生産者のお話からは、日々の手入れと工夫の大切さを教えられ、大自然と向き合う真摯な姿勢を学んだ。午後にはスノーラフティングも体験。雪国ならではの雄大な景色と爽快感を味わった。収穫したキャベツを持ち帰りながら、そしてお土産にいただいた格別のメロンアイスクリームを食べながら、私たちは自然の恵みと人の温かさに包まれた体験を胸に刻んだ。
編集委員(学生)による履修のすすめ:
この授業では日常生活では得られない体験ができる。時間に追われる毎日を過ごしていると、効率や成果ばかりを求めてしまうが、中富良野では時間がゆっくり流れている。地域の人たちは、子どもも大人も、手に手をとりあい、自然と共生しながら暮らしている。その姿には、真冬なのに温かさを感じた。ここでは私たちが見失いがちな人と人とのつながりや自然と共に生きる感覚を肌で知ることができる。この授業を履修すれば、自分自身の価値観や生き方を見つめ直すきっかけになると思う。ぜひ多くの人にこの特別な学びの場を体験してほしい。









