リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ
2026.07.08
- 総合科目
総合科目「サイエンスラボ講座(化学)」授業紹介〜クロマトグラフィー〜
ブログ投稿者:リベラルアーツ&サイエンス教育センター(LASEC)専任講師 遠藤 瑞己
本授業は、実験を通じて物質の振る舞いや性質を理解することを目的とした演習型の授業です。取り扱う内容は高校化学で扱われるような実験のほか、ガラス細工、七宝焼などのものづくり体験など、多岐にわたっています。今回はクロマトグラフィーを紹介します。
クロマトグラフィーは、混合物中の各成分を、固定相と相互作用する力の違いによって分離する手法です。シリカゲルを充填したガラス管を用いると、色のついた混合物が各成分に分離していく様子が視覚的に追跡できるので、見た目も楽しい実験です。
クロマトグラフィーは、混合物中の各成分を、固定相と相互作用する力の違いによって分離する手法です。シリカゲルを充填したガラス管を用いると、色のついた混合物が各成分に分離していく様子が視覚的に追跡できるので、見た目も楽しい実験です。
実際の授業では、その回で扱う内容について、その化学史家の観点から歴史的背景を含めた解説を行っています。クロマトグラフィーは、植物の葉に含まれるクロロフィルと呼ばれる緑色物質の研究で活躍しました。
18世紀後半以降、植物を構成する要素への関心が高まり、蒸留や抽出による分析が進められました。1817年、ペルティエ(Pierre-Joseph Pelletier、1788–1842)とカヴァントゥ(Joseph Bienaimé Caventou、1795–1877)は葉からアルコールで緑色物質を抽出し、これをクロロフィルと呼びました。
1833年、ブリュースター(David Brewster、1781–1868)はこの緑色物質の性質を分析し、強い太陽光をあてると赤色に変化することを発見しました。彼はこれが散乱によるものだと考えました。一方、ストークス(George Gabriel Stokes、1819–1903)は1852年、藍色の光が赤色の光に変換されていると考え、このような現象を「蛍光」と呼びました。これは「光は色(屈折性)を変えない」とするニュートン(Isaac Newton、1643–1727)の説に対立するものでした。
ストークスは1864年、クロロフィルは混合物であり、緑色成分が2つ、黄色成分が2つ含まれていると主張しました。しかし成分の数や性質などについては激しい論争がありました。当時の技術では混合物を分離する過程でクロロフィルの成分が変化しやすかったのも、混乱の原因となっていました。
そこでツヴェット(Mikhail Semyonovich Tswett、1872–1919)は、粉砕した炭酸カルシウムを吸着剤としてガラス管に充填して溶液を加圧ろ過する、クロマトグラフィーを開発しました。彼は緑色物質であるクロロフィルが青色と黄色の成分からなると主張し、定説に挑戦しました。
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ほうれん草からの抽出 -

クロマトグラフィーの様子
授業では、実際にほうれん草の葉からクロロフィルを抽出し、クロマトグラフィーで各成分を分離することに挑戦しました。緑色のクロロフィルから青色と黄色の成分が分離していく様子に、学生からも驚きの声があがりました。
実験後にはさらに、分離前のクロロフィルと分離後の各成分にブラックライトをあて、ブリュースターが発見した「赤色の光を発する」という性質が失われていないことも確認しました。
旧制武蔵高等学校や武蔵大学で教鞭をとった物理化学者の玉蟲文一(1898–1982)は、科学の本質である経験と思考の相互作用を教えるには、歴史的題材が有効だと考えていました。今回紹介したように本授業でも玉蟲の考え方を受け継ぎ、歴史的背景を踏まえたうえで実際に実験し、科学の本質に触れることを目指しています。