電線、音楽、
独自の視点で
サブカルチャーを語る

社会学部 メディア社会学科
石山蓮華さん(2011年4月入学)
南田勝也 教授

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石山蓮華さん × 南田勝也 教授 対談

メディア社会学科卒業生で、電線愛好家・文筆家・俳優とマルチに活躍される石山蓮華さんをお迎えし、同じくメディア社会学科で音楽社会学を専門とする南田勝也 教授と在学中の思い出、現在の活動、好きな電線、音楽のことを語っていただきました。

武蔵を志望した理由

石山
私は元々子役としてテレビに出ていたのですが、どちらかというと作り手側のほうが楽しいかもしれないと思っていました。武蔵のオープンキャンパスに来た時に、学生が映像制作に挑戦する「ムサシテレビ」のことを知って、自分が興味のあることを学べそうだなと思い、AO入試を受けました。
南田
僕はAO入試の面接の時、試験官側にいたと思う。当時はポピュラー文化がデジタル化する過渡期で、入試のレポート課題では、新時代の音楽メディアの役割について問いました。
石山
レポートは、マイケル・ジャクソンの音楽や死後の報道についてまとめた記憶があります。武蔵は小規模でキャンパスに緑が多く、のんびり勉強できそうだなと思ったのも入学の決め手でした。

※当時の社会実践プロジェクトの1つ。

ロックが大音量で流れる授業

石山
南田先生の授業は、水曜5限の「音楽文化の社会学」を受けていました。自分が好きなポップスやロックがこんなアーティストの影響を受けていた、こんな時代背景があったと知ることができて面白かったです。ある時、私の好きなBjörkの曲を大音量で流してくださって、大きな場所で聴くのが初めてでしたし、すごく感動したんですよね。
南田
今も同じ水曜5限でやってますよ。
石山
本当ですか!!
南田
1日の活動が終わる夕暮れの時間帯にロックを大音量で聴くのもいいかな、と勝手に思って。
石山
授業ではアウトサイド、アート、エンターテインメントの3つの指標を教えていただいたのですが、今もラジオのパーソナリティや本を紹介するお仕事などで、物事をちょっと引いた視点で見る時に活きていて、自分の思考のベースにもなっています。

石山さんは一点突破型!?

南田
そういえば僕のゼミに入ろうか迷って、面談に来たことあったよね?「私はちょっと変なものが好きなんですけど、ここのゼミではできますか?」って言われて。
石山
そういえばそうでした・・・今もその感じは変わらないんですが、あらためて言葉にされると恥ずかしいですね。
南田
石山さんはサブカルチャーに対して貪欲だったよね。当時の学生って、サブカルチャー全般に興味があって、オールマイティに詳しい人を目指すみたいな部分があったんだけど、今の学生は「推し」や「推し活」という言葉通り、一点突破型。石山さんは時代の移り変わりを察知していたのか、卒業した直後から「電線」という一点突破で世に出ていったじゃないですか。時代の読み方が鋭かったということですよね。
石山
でもラジオのパーソナリティを始めて、本当に自分って知識の幅が狭いんだなと実感しています。正直テレビもあまり見てこなかったし、時事ネタにも弱いし。お仕事を通して1つずつ勉強しています。日々付け焼刃ですね(笑)
南田
それは僕も同じです。昨日覚えたことを10年前から知ってるみたいにしゃべりますから。
石山
堂々とするのが大事なんですね。
南田
はい、堂々とやるのが大事です(笑)

コロナ禍で変わった音楽の楽しみ方

南田
石山さんが卒論を一生懸命書いていた頃、僕は大学の長期研修制度で海外のロックフェスに足を運んでいたんですよ。その経験と、ちょうどCDが売れなくなりライブの存在感が増してきたというのもあって、今はライブが研究のメイン。授業でも大勢の聴衆が集まっているフェスの映像を流すから、迫力があるんじゃないかと思う。
石山
私はずっと音楽が好きで、高校生の頃はヒトカラで、YUKIさん、椎名林檎さん、銀杏BOYZさん、アニソンなどを歌いまくっていました。うるさくて、なおかつ人前では歌いにくい曲を延々と(笑)
南田
でもコロナ禍を経て、(音楽に限らず)1人で楽しむということが増えた気がします。石山さんが学生だった2010年代ぐらいは、音楽は共同のもの、みんなで楽しむものみたいな概念が結構あって、自分が普段聴かないような音楽でもライブやフェスに行くと周囲とつながれた。今の学生を見ていると、友達同士なのに、一方がある音楽の話をしているともう一方はシーンとしているみたいな光景を見かけますね。

電線をタピオカぐらい流行らせたい

南田
先日大学の前の電柱に、石山さんがTBSラジオ放送中と広告を出しているのを見つけました。いつから出してたの?
石山
2023年4月からTBSラジオ「こねくと」のパーソナリティに就任したのを機に、都内で個人的に思い入れのある場所の、良いなと思った電柱にいくつか出しました。
南田
電柱に広告って貼れるんですか!へー、知らなかった。
石山
電線って、戦時中に空襲で町が焼かれてしまって、仮設で建てられた電柱・配電線の仕組みが現在まで続いている、言わば復興のシンボルだと思うんです。(都市化を語る上で、)電線のある景観は批判されることもあります。私は無電柱化、無電線化そのものに反対はしませんが、景観の良し悪しはもっと多角的な視点で語られてもいいんじゃないかな、と思っています。
南田
日本で無電柱化が進んでるのってどこだろう?
石山
東京や京都をはじめ、全国の大通りや観光名所ですかね。
南田
青森の五所川原市もそうですね。理由は立佞武多(たちねぷた)があるから。
石山
昔はお祭りで背の高い大きな山車が練り歩いていたけど、電柱や電線に引っかかってしまうから低くなり、神輿になったと聞いたことがあります。
南田
それ、電線=ワルモノになってしまわない?(笑)
石山
神というものを見上げる姿勢って、人に畏怖の念を抱かせるじゃないですか。でも神輿という低いものをみんなで担ぐことで、祭りが共同体としての地域の結束力を確かめるものに変わった、とかどうですか。電線コミュニティ強化説です!
南田
素晴らしいです。ずっと聞きたかったんですけど、(まわりから)電線、電線、って言われるのはぶっちゃけどう思っているんですか?
石山
どんとこい!という感じです。電線に関することはどんどんやっていきたいんですけど、まだ電線の良いところを伝え切れていないというか、点でしか掘れていないのが課題だと思っています。1回タピオカぐらい流行ったら、良いも悪いもいろんな意見が出て、みんなが電線について語るだけの素地ができるんじゃないかと思っています。

プロフィール

石山蓮華 Renge Ishiyama

電線愛好家・文筆家・俳優。1992年生まれ、埼玉県出身。TBSラジオ「こねくと」(毎週月~木曜日14:00~17:30放送)でメインパーソナリティ。電線愛好家として『タモリ倶楽部』などのメディアに出演するほか、日本電線工業会公認「電線アンバサダー」としても活動。著書に『犬もどき読書日記』(晶文社)、『電線の恋人』(平凡社)がある。近年の出演作はドラマ「日常の絶景」(テレビ東京)など。

南田勝也 Katsuya Minamida

武蔵大学社会学部教授。専門は音楽社会学、ポピュラー文化研究。ロックの意味を社会学的に追究することをライフワークにしている。主著『ロックミュージックの社会学』(2001年)『オルタナティブロックの社会学』(2014年)『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか』(2019年)など多数。近刊として『ライブミュージックの社会学』(2025年)を予定している。