人文学とは、
過去と未来をつなぐ知恵

人文科学研究科
2022年4月人文学部 入学

#人文科学研究科 #大学院生

大学院進学を考えたきっかけを教えてください。

生涯をかけて追究したいと思えるような研究テーマに出会ったことがきっかけです。
 
私は高校生活の大半がコロナ禍と重なり、貴重な3年間を楽しめなかったことへの心残りを抱えたまま、自分のやりたいことや将来について深く考えずに大学へ進学しました。しかし、学部の講義やゼミで様々なことを学ぶ中で少しずつ自分の興味が明確になり、ゼミで偶然見つけたフランスの画家ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品や生涯に強く惹かれました。彼はキャリア初期にイタリアを訪れ、「まるで白内障の手術を受けたかのようだった」とその衝撃を後に語っています。私もイタリアを訪れた際に同じような感動を覚えた経験があり、ダヴィッドにとってローマ留学がどのような意味を持ったのかを考えるようになりました。そして将来について考え始めた頃、学生のうちに一つのことに本気で向き合って何かを成し遂げたいという思いと、このテーマについて研究を深めたいという気持ちが重なり、大学院へ進学しようと決めました。

学部生時代は、ヨーロッパ文化学科でどんなゼミや研究を行っていましたか?

学部生時代は、西洋美術史を中心に、ヨーロッパの歴史や芸術について学びました。ゼミでは、調べたい絵画を一つ選び、テーマを設定して発表を行いました。まずは作品を細かく観察するディスクリプション(作品記述)を行い、描かれている人物や色彩、構図などを読み取ります。その上で、誰が、いつ、何のために描いた作品なのかを文献で調べ、作品の特徴や画家の意図などを考察しました。
 
3年生のゼミでは、フラ・アンジェリコの≪受胎告知≫を取り上げました。宗教画を研究する際には筆のタッチや色彩といった造形的な特徴だけでなく、その背景にある当時の社会状況や宗教的なモチーフについても理解することが重要であり、そうした視点から作品を読み解くことを意識しました。

大学院で研究する中で、一番時間をかけていることは何ですか?

イタリア旅行にて(ミラノ大聖堂)
一番時間をかけているのは、先行研究を探して読み込むことです。研究では、調べたことをまとめるだけでなく、自分なりの考察を根拠をもって示す必要があるため、いろいろな文献を読んで「何が分かっていて、何がまだ分かっていないのか」を整理します。
 
私が研究しているジャック=ルイ・ダヴィッドはフランス美術史を代表する画家なので先行研究が非常に多く、新しい文献も次々と出版されます。必要な文献を見つけ、オリジナリティのある論を展開するのはとても難しいです。
 
現在私は、若き日のダヴィッドがローマ留学中に描いた大量のデッサンについて調べています。それらが後の作品にどのように生かされたのかを分析し、画家の美術アカデミーへのアピールを明らかにしようとしています。時間のかかる作業ですが、好きなことについて自分の力で新しい発見ができるので楽しさも感じています。

最後に、「人文学」とは何だと思いますか? また、将来の展望などについて自由にお話しください。

人文学とは、過去と未来をつなぐ知恵だと思います。
 
歴史や文学、美術についての研究は、科学や医学のように新たな発見をすることは少ないかもしれませんが、人々がどのような価値観をもち、何を大切にして生きてきたのかを知ることで、現代社会を新たな視点から見つめ直すことができます。
 
私が人文学に興味をもったきっかけは、イタリアを旅行し、古代ローマ時代の遺跡や芸術作品を見たことでした。2,000年前に造られた建築物や芸術作品が今も多く残っており、そのレベルの高さに驚かされました。そして同時に、多くの人々が暮らすためのインフラ整備や民衆のコントロールなど、現代にも通じる課題について考えさせられました。
 
過去を知ることは知識を増やすだけではなく、これからの社会のあり方を考えるきっかけになると思います。