自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2013.06.30

  • 武蔵One Point自然観察

ヤマボウシとハナミズキは兄弟

梅雨時期に武蔵で咲いている花の一つがヤマボウシです。ハナミズキ広場の8号館角の所に咲いている白い花です。
 
ハナミズキとヤマボウシは、花がお互いに良く似ています。植物の分類で言えば属が同じなのです。ハナミズキはアメリカ原産、ヤマボウシは日本列島に固有の植物です。なぜ、太平洋を挟んだアメリカと日本とに同じ植物の仲間があるのでしょうか?
 
実はこの謎の解明に寄与したのがペリーの黒船だったのです。ペリーのアメリカ艦隊には植物学者が乗船していて、黒船が寄航地で植物を採取して標本として持ち帰っていたのです。2次にわたるアメリカの植物調査隊が、黒船に乗船していたことはあまり知られていません。
 
それらの標本を研究したのがエイサ・グレイ博士でした。彼は、標本の同定を通じて、極東アジアの植物とアメリカ合衆国との植物との類似に確信をもったのです。それまで、シーボルトらが著した書物から、その類似性に気が付いてたのです。1846年、1859年に論文を執筆し、アメリカとアジアとの隔離分布に ついて論じたのでした。
 
現在ではこれらの植物の一群は「古第三紀要素の植物」と呼ばれています。かつて、地球全体が暖かい時期、数千年前にベーリング海の北辺の温帯林で進化した 植物が共通の祖先なのです。その後、地球は寒冷化し、数百万年前からは氷河期が繰り返し訪れるようになりました。その寒さのため、これらの植物は、一つはアジアを南下し、もう一つがアメリカ大陸を南下して、進化し兄弟のような関係となったのです。
 
ハナミズキは、良く知られているように、現在ポトマック河畔の桜並木としてアメリカ人にもこよなく愛されている桜の返礼として日本にもたらされたものなのです。こうして、数千万万年の時を経て、日本の武蔵大学ハナミズキ広場で隣り合わせに咲いているのです。
 
ヤマボウシの花を愛でながら、アメリカと日本との交流の歴史、そして、生物の壮大な地球規模の進化に思いを馳せてみてください。
 
この項目は、小山鐵夫編著「黒船が持ち帰った植物たち」アボック社出版局1996.11を参考にしました。興味のある人は武蔵大学図書館に所蔵されています。
  • ヤマボウシとハナミズキは兄弟
    ヤマボウシの花は、ハナミズキに似ているのがよくわかる。 撮影日時: 2012:05:26 13:32:34
  • ヤマボウシとハナミズキは兄弟
    8号館3階からみたヤマボウシの木。 撮影日時: 2012:06:03 07:59:22
  • ヤマボウシとハナミズキは兄弟
    ハナミズキ広場のハナミズキの木。 撮影日時: 2012:06:16 13:48:21
  • ヤマボウシとハナミズキは兄弟
    梅雨になると秋には赤く実る未熟な実が育っている。 撮影日時: 2012:06:16 13:49:43