自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2022.11.04

  • 国東農業研修

農家民宿おふじ訪問 若菜絵莉 (国東-2022-14)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹(Professor Tamaki MARUHASHI)

 田染荘小崎の美しい景観を鑑賞した後、我々は丸橋教授と松木さんが運転してくださる車にそれぞれ乗り、山奥へと向かった。車を降りると、スマートフォンには「圏外」の表示が。国東では数多くの自然豊かな土地を訪れたが、圏外になることは初めてだったので、私たちは驚きを隠せなかった。
 
 車を山の麓に止め、松木さんと教授の案内で私たちは更に山の奥へと進んだ。道中では松木さんが山に生えている植物の解説や水路の解説をしてくださった。あるといわれても、位置を知っていなければ見過ごしてしまうほど、今は使われていない小さな井堰を訪れた。ウツギシタ井堰は、田んぼ数枚を潤していたそうだ。今、その田には杉が植えられている。水の取り入れ口となっている巨岩を鑿で削り、細い水路を掘り、渓流沿いに石垣で水路を築き、最後は掛樋で対岸の田に渡す工夫がなされていたとのことだった。一見同じように見えてしまう植物や川にもそれぞれ意味やストーリーがあるのだと気付かされた。
 
 坂を上りきると、開けた土地に出て、ポツンと佇む一軒家が見えた。私たちがその家に近づくと、家の中から元気な女性の声が聞こえ、河野忠臣さん・洋子さん夫妻が私たちを出迎えてくれた。洋子さんは学生に山盛りのゆで卵やおせんべい、ジュースやお茶を振舞ってくださった。お二人の「おもてなし」の心がひしひしと伝わって来て、とても暖かい気持ちになった。
 
 お二人は、以前までこの家で「農家民宿」を営んでいた。現在はお二人の体調や疫病の事を考え、民宿経営は終了してしまったそうだ。パンデミック以前の武蔵大学国東半島研修では、例年おふじに宿泊し、お二人には大変お世話になったという。丸橋教授や武蔵大生時代に国東半島研修に参加し、現在は国東市役所で活躍されている古谷さんは研修の際のおふじでの思い出話に花を咲かせていた。歴代の研修メンバーがおふじで経験したカラオケ大会やBBQ、河野夫妻との交流のお話を聞いていると、感染対策のためおふじに宿泊できない私たちはもどかしい気持ちになった。
 
 河野夫妻が農家民宿を始めたきっかけは、重要文化的景観に指定されるにあたり「田染に観光客を取り込もう」という取り組みの一環からだったという。地域の取り組みとして始めた民宿経営をここまで長い間続けられたのは、お客さんとの関わる楽しさがあったからだそうだ。おふじでは今までにシンガポールやフランスなど世界中からの観光客や様々な地域の学生を受け入れたという。外国人観光客が宿泊する際にはスマホの翻訳アプリを利用してコミュニケーションを取るなど、宿泊者に合わせた対応を行っていたそうだ。中学生の修学旅行で農業体験として宿泊を受けることも何度かあったが、宿泊していたこどもの気持ちの変化や成長を感じたこともあったという。お話の中で、「泊まりに来た学生の中で武蔵生が一番好きだった」という大変嬉しいお言葉をいただくことが出来た。武蔵大学とおふじの交流の歴史の長さに感動すると共に、自分もその歴史に参加出来ていることを誇らしく思った。
 
 また、忠臣さんが長年携わってきたしいたけ栽培についてもお話を伺うことができた。忠臣さんは干ししいたけ生産量日本一の大分県「しいたけ名人」の異名を持つほどしいたけ栽培を得意とされている。クヌギの木を用いた原木栽培でしいたけを毎年2トンも作られていたという。忠臣さんが作った干ししいたけを見せていただいたが、袋がはち切れそうなほど大きな干ししいたけだった。こんなにも大きく立派な干ししいたけはスーパーで見たことが無かったので、このしいたけを作ることができる忠臣さんの技術力に非常に驚いた。
 
 今回の訪問では後の予定が詰まっていたこともあり、十分にお二人のお話を聞くことができなかった事が悔やまれる。しかし、短い時間であっても民宿での人との関わりやしいたけ栽培について楽しそうに話すお二人の姿を見て、明るいパワーを貰ったように感じる。河野忠臣さん、洋子さん、貴重なお話をありがとうございました。
  • 写真1:農家民泊時代の思い出話をされる河野ご夫妻。時にはアクシデントもあったが、楽しかったそうだ。撮影日時: 2022:09:03 18:20:45
  • 写真2:河野ご夫妻と研修メンバーで記念写真を撮影。短い時間だったが充実した時間を過ごすことが出来た。撮影日時: 2022:09:03 18:40:47