自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2022.11.04

  • 国東農業研修

国東芸術祭作品 大河原花 (国東-2022-09)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹(Professor Tamaki MARUHASHI)

 ラ・パロマの中野さんにお話聞いた後向かったのは国見ふるさと展示館だ。ここは国指定の登録有形文化財となっている建物で六郷満山文化や日本人として初めてキリスト教の聖地であるエルサレムに足を踏み入れたというペトロ岐部カスイという人物、昔の民俗文化、国見出身の芸術家たちの作品を学ぶことができる。また、国見町ならではの新鮮な青果類やウニ、干しダコなどが購入できる物産品販売所や国見産の食材を使った料理が楽しめるお食事処が併設している。
 
 ここでは、有永洋明さんから国東の歴史と文化の特徴をお聞きし、ペトロ岐部カスイについて学ぶことができた。ペトロ岐部は国見町岐部に天正15(1587)年に生まれた人物で熱心なキリスト教徒であった両親のもとに生まれ、長崎のセミナリオを卒業したのち徳川家康の発布した禁教令によってマカオへと追放された人物である。司祭となるためローマを目指し、1620年に到着した。この途中にエルサレムへと足を踏み入れたのだそうだ。到着したその年の11月に異例の速さで司教に叙せられると、日本でのキリスト教の迫害悪化の報を聞き、帰国を決意。10年ほどの年月を経て日本へと帰国し、潜伏しながらの布教に勤めていたが仙台藩にて捕らえられてしまい1639年に江戸で殉教したのである。展示館ではペトロ岐部の穴吊りの画やローマで自らの素性を記した直筆の文書など様々な資料を拝見することができた。また、以前行われたペトロ岐部を題材にしたミュージカルの写真も展示してあった。なお、今年の11月6日には新たなアプローチで描かれたペトロ岐部の創作舞台『ムジカと生きる』がiichiko総合文化センターで行われるそうだ。
 
 六郷満山文化の展示では平安・鎌倉時代から根付く国東独自の仏教文化の紹介や鬼塚古墳からの貴重な出土品の展示がなされており、国見出身の芸術家の作品は洋画家の江藤哲をはじめとして陶芸家の河合誓徳、竹工芸家の田辺幸竹斉各氏などのものが数多く展示されている。今回は時間の都合上あまりゆっくりとみることが叶わなかったが今度もう一度ぜひ足を運びじっくりと見させていただきたいと思った。
 
 閉館時間も過ぎてしまって見学も終える頃、武井啓江さんにお会いした。最近国東に移住してきた方だった。決心がついたのは「まだ移住しないの?」とこどもが背中を押してくれたからとのことだった。空港からものの10分も移動すれば、自然にあふれている場所は、全国どこをさがしても国東以外にはないことに不思議さと魅力を感じている。私には、いたる所で精霊を感じれる土地柄とのことだった。例えば、この展示館の裏山城山もその一つだと教えてくれた。次節にある「説教壇」があるシイノキ林である。お仕事は、この展示館に併設されている食事処城山亭を切り盛りしているとのことだった。偶然とは言え、こんな風に移住者と自然に言葉を交わす機会が訪れるとは、やはり、国東は多くに人を惹きつける地なのだろう。
  • 写真1:城山に作られた作品「説教壇」全体の様子。実際に結婚式も行われたことがあるそうだ。撮影日時: 2022:09:02 17:28:37
  • 写真2:近づいて触ってみると、障子やふすまの質感や模様まで微細にかたどられていて、この家を訪れたような感覚が湧きおこる。撮影日時: 2022:09:02 18:32:39