自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2022.11.04

  • 国東農業研修

大分の空むさし藤原さん講話 波多野結衣 (国東-2022-02)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹(Professor Tamaki MARUHASHI)

 大分空港にて研修メンバー全員で集合した後、私たちは『大分の空むさし』に向かった。直売所とレストランが隣り合わせになっているその場所は、入った瞬間から暖かい雰囲気であった。沢山の魅力的な品々に目を奪われながらもレストランの方に案内され、むさしの店長である藤原孝義さんにお話を聞かせていただいた。
 
 まず簡単にこの『大分の空むさし』の概要について説明をいただいた。ここは大分県国東市・武蔵地区の農家さんの共同出資によって建設され、直売所と直営農場の運営から始まった。ここ2年のコロナ禍により、経営は厳しく、大きく状況が変化したという。藤原さんが語るその目には苦しさと力強さが表われており、その経験がどれだけ大変であったか、経営者としての責任の重さ、というものが強く伝わってきた。
 
 コロナ禍により人が来ないということ、それは同時にものが売れなくなることを意味する。どんなに質の良い商品を仕入れられても、売り場がないため、無料で配るしか方法はない。一時は一週間ほど閉店を余儀なくされたそうだ。4~500万円の赤字も経営者である自分に責任があるといい、全ての負担は自分で背負うしかない。その苦労と大変さは、私には到底計り知れないものであると感じた。
 
 しかし、藤原さんはそんな逆境にも負けず、新しい試みを打ち出していた。それが「石窯」である。地元の素材をふんだんに使ったピザを作ろうというものだ。具材には季節の野菜や県産ブランドである冠地どり、生地までも地元のものを使用し、隅々までこだわりが詰まっている。このピザはテイクアウトが可能であるため、それを目的としたお客さんにも利用してもらおうという願いがある。また冷凍のピザも販売されており、今の時代にあった売り出し方だと思った。講話の後、昼食にピザを注文したが、これを目当てにきてしまいたくなるほどおいしかった。
 
 続いて、直売所としての経営の難しさについて語ってくださった。消費者が直売所を利用するに当たり、何の目的なのかを追求しなければならない。どういったものを望んでいるのか、それは家族のためなのか、それとも自分のためなのか。新鮮な野菜だから売れるというわけでもなく、客層や時代の変化に応じて需要も大きく変わってくる。地元の高齢者は最小限に買い物を済ませてしまい、近場で収めてしまう傾向がある。一方で若い層は増えてきているそうだが、客数が増えるだけで一人当たりの単価は減少しているのが現実だそうだ。また、惣菜が売れやすいという近年であっても手の込んだものは売れにくく、サラダで食べられる調理が簡単なものが売れているという。このような細かな需要の変化に合わせるのは本当に大変なことである。私もいち消費者であるが、消費者の気まぐれ、というかちょっとした気分によって経営を左右させてしまっているのかと思うと申し訳なささえ感じた。安さだけで決めてしまうのでなく、誇りや自信をもって売り出しているものを消費者としても選ぼうという考えになった。
 
 お話の後、直売所の中を見させていただいた。沢山の産物が陳列され、中には「白なす」など初めて見る種類もあり、見ていてとても興味が引かれた。まだ研修の前半のため野菜を買うことはできないが、帰る前に寄ってお土産を買おうと心に決めた。
 
  • 写真1:新鮮な野菜や特産品が並ぶ直売所で品揃えの工夫を話す藤原さん。たくさんの手書きで書かれたポップからも愛情が伝わってくる。撮影日時: 2022:09:01 10:37:32
  • 写真2:藤原さんとの記念撮影。貴重なお話、ありがとうございました。撮影日時: 2022:09:01 12:02:09