自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2022.11.09

  • 国東農業研修

安心院鏝絵通り 石平青 (国東-2022-19)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹(Professor Tamaki MARUHASHI)

 安心院葡萄酒工房のほど近くにあるレストランで昼食をとり、地獄極楽の洞窟で二つの世界を巡った後、私たちは安心院鏝絵通りへと向かった。駐車場で車から降り、松木さんの解説を伺う。鏝絵とは左官と呼ばれる壁を塗る職人が漆喰の壁などに鏝を使って描いたレリーフのことである。はじめのうちは市松模様などのシンプルな模様を施すのみであったが、次第に建物の戸袋や壁などに絵を描くようになっていったのだという。壮麗な鏝絵は左官職人の遊び心の表れであると共に、鏝絵を施された建物の家主のステータスを表象するものでもあったそうである。今回訪れた安心院鏝絵通りには、明治時代に描かれた鏝絵が民家の壁などに多く残されている。
 
 建物の壁や戸袋に注目しながら通りを歩く。どこか懐かしい家並みの中に、虎や龍、七福神に富士山など様々な図柄の鏝絵が残されていた。虎は魔除け、龍は火除けなど、図柄にはそれぞれ意味が込められているのだという。また、猿の代わりに鯛に三番叟を躍らせる恵比寿様など、ユニークな図柄も見ることが出来た。
 
 乾けばすぐに固まってしまう漆喰に鏝一つで繊細な図柄を施す左官職人の技術は並大抵のものではない。鏝絵通りの絵の数々は、その様な職人の卓越した技巧とユーモアの結晶なのだと感じた。また一部修復されているものもあるものの、100年以上も前に描かれた絵が風雨にさらされながらもこれほどまでに綺麗に残されていることに驚いた。漆喰に顔料を混ぜ込んで着色しているため、風化や色落ちがしにくいのだという。安心院の鏝絵はこれからもこの場所に残り続け、当時の左官職人の技術や想いを訪れる人々に伝えていくのだろう。
 
  • 民家に描かれた虎の鏝絵。虎は魔除けのシンボルである。撮影日時: 2022:09:04 15:53:21
  • 明治23年に描かれ、平成16年に修復された鏝絵。富士山・鷹・茄子の三つの縁起物のシンボルが描かれている。撮影日時: 2022:09:04 15:50:10