自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2022.11.09

  • 国東農業研修

人生のターニングポイント 国東市役所 古谷凪沙 (国東-2022-25)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹(Professor Tamaki MARUHASHI)

 「やりたいことが決まってないし、何になりたいかわからない」。5年前、そういって泣いた国東での夏を鮮明に覚えている。今回国東市民として学生たちを迎えるにあたり、過去のレポートを読み返した。「ここが私の人生のターニングポイントだったと思う」。本当にその通りである。この研修に出会わなければ今の私はここにいない。
 
 私は大学時代、2度この研修に参加した後卒業論文の対象として国東半島のフィールドワークをおこなった。たくさんの文化と歴史と人に出会ううちに冗談じゃなく「ここで生きて骨をうずめたい」と思い、じゃあ新卒で就職したらいいじゃないという考えにたどり着いた。今思い返すと「骨をうずめる」は大げさで先を見過ぎである。人生すっとばして死んでしまっている。しかし、気がついたら国東市役所の採用面接で「誰よりもこの土地と文化と人が大好きです。国東以外で就職する気はありません。」と話していた。
 
 いざ移住をしてみると、驚くほど多くの方が武蔵大学と旧武蔵町の交流を知っていた。コロナ禍となり、この研修も二年中止となっている。多くの人が「今年こそは研修を」と願い、無事決行が決まった時にはとても喜んでくださった。この研修が長い年月をかけどれだけ大切にされてきたのかを実感した。誰よりも嬉しく、誇らしく思う。
 
 今回、大変ありがたいことに丸橋教授から休日は一緒に研修日程をめぐらないかとお誘いをいただいた。まさか学生時代とは真逆の、現地で学生に話す立場になるなんて、もう一度研修で学べるなんて、思いもしなかった。
 
 市民になってからめぐる研修は、学生時代とは違った学びを与えてくれた。住んでいるからこそよくわかること、逆に住んでいるから霞み見えにくくなってしまっていたこと。丸橋教授は「人生、学びをやめてはいけない」「学ぶ仲間がいるといい」とおっしゃった。本当にその通りである。研修に参加した学生たちは私にはない捉え方、考え方、視点があって感心することが多くあった。自分にはない思考に出会ったときの楽しさとくやしさは、再度学ぶ気持ちを思い出させてくれたように思う。まだまだ知らないこと、分からないことばかり。参加メンバーのみんな、たくさんの学びや気づきをありがとう。この研修があったから、私は大きく変わり、休む間もないあっという間で凝縮された大学生活を送ることができた。学生たちにとってこの研修が、そんな大切なものになったらよいと願う。
 
 また、研修では大切な人たちとの再会も多くあった。いつでも遊びにおいで、いつでも連絡しておいでと声をかけてくださり、改めて人の温かさに泣きそうな場面が何度もあった。思い返せば研修中は泣いてばかりである。いつでもお会いできるわけではないからこそ、次回皆さんにお会いするときには成長した私でいたい。
 
 長年この研修をつなぎ、学生と国東半島と人とをつなぐ大きな懸け橋となってくださった恩師、丸橋教授には感謝を伝えても伝えきれない。丸橋教授のような専門性や、知識や、人脈や、人を導く力はないけれど、丸橋教授のような人をつないでいけるような人になりたい。研修の最後、櫻井さんは「この研修が自分にとって学芸員としての原点」と話をしてくださった。私は、櫻井さんに出会って学芸員の魅力を知り、憧れ、学芸員の資格をとった。そんな、誰かにとってなにかきっかけになるような人になりたい。
 
 「やりたいことが決まってないし、何になりたいかわからなかった私」に、なんでもできてなんにでもなれることを教えてくれた大切な研修。次は私がなにかしらの形でつなぎ、返す番だと強く想う研修期間だった。