自然科学・身体運動科学分野活動ブログ
2021.04.07
- 武蔵One Point自然観察
ケヤキ雄花の豪雨 (Now 武蔵の自然 No-36)
ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹
桜吹雪という言葉がありますが、花は受精したら落下してしまいます。花粉を送り、花粉を受け取り、自らの胚珠を受精させるのが生殖器官である花の機能です。したがって受粉が終われば、花を捨ててしまいます。
めしべとおしべが同じ花の中にあるのが当たり前のように思っているかもしれませんが、同じ枝の別の場所に雄花と雌花が咲く場合もあれば、動物のように雄木と雌木の別々の個体となっている場合もあります。
花粉をどのように運ぶかは植物ごとに多様な進化を遂げています。例えば蜜蜂は受粉サービスの報酬として花蜜と花粉を集めます。しかし、蜜蜂が他の種の花へと飛んでいったのでは、せっかくの報酬も無駄になってしまいます。花から見ると蜜蜂への報酬は先払いとなってしまうので、如何に同種の花から花へと移動させるかは重大な問題で、そこが進化の工夫点です。
一方、風任せという場合もあります。スギ花粉を思い浮かべてください。花粉がどこへ飛んでいくかを親木は操作できませんから、沢山の花粉を生産する必要があります。ケヤキも風散布ですから、雄花の数が雌花の数よりもずっと多いのです。入学式後のガイダンス期間中に頭に何か降ってきたと感じた人がいれば、それがケヤキの雄花だったのです。
最後に巨木であるケヤキの雄花数は?推定するためには、毎日掃除してしまってはいけません。土の地面では拾うこともできません。幸い、3号館中庭はコンクリートパネルで覆われているので、生物実験で数えたことがあります。ケヤキの枝葉が茂っている面積、専門用語では樹冠面積といいますが、とサンプルを集めてカウントしたパネル面積との比率から荒く推定することができます。クイズです。武蔵の大ケヤキは一体何個くらいの雄花を生産したでしょうか?1万個は軽く越えそうですが、十万個、百万個?千万個?どの単位なのか想像してみてください。