自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2020.06.26

  • 武蔵One Point自然観察

樹木QRプロジェクト(Now 武蔵の自然 No-15)

ラベルの設置を終えて、有馬先生、福田先生と生物学ラボワークの学生さんと記念撮影。撮影日時: 2019:05:17 13:58:06
武蔵の構内には200種以上の樹木が生育しているそうです。園芸植物もたくさんあるのですが、これまで紹介してきたように、日本の森を構成する樹種も数多くみることができます。目に心に優しい緑ですが、樹木の知識というか、もっと積極的に木と学生が結ばれる手法として提案して実現しているのが樹木QRコードプロジェクトなのです。QRラベルを発見したら、ぜひスマホをかざしてみてください。それぞれの樹種は、武蔵大学ではなく、根津育英武蔵学園HP⇒武蔵学園について⇒学園の樹木について、とたどってください。どの木にラベルがつけてあるかの図もあります。構内散策のつもりで見て回ってください。
クヌギには有馬先生とっておきのエピソードがあります。内容は、福田先生のクヌギ解説ページに詳しく述べられています。有馬先生が武蔵を受験して合格発表で番号を確かめ、うれしくて学園内を散策していたときに生まれた俳句が以下の句です。この句をホトトギスに投稿したところ高浜虚子の目に留まり俳句への入り口になったと学生たちに話してくれました。

 

櫟なほ 芽吹かざれども 雲は春

福田先生からの「武蔵学園の樹木」についてのご挨拶。撮影日時: 2019:05:17 13:46:37
学園長有馬先生が元武蔵高中福田校長先生と出会ったときに「植物園や公園では樹木に名札がある。武蔵でも樹木に名札をつけて、生徒や学生がわかるように」との依頼がありました。有馬先生は俳人として高名な方で「俳句の季語には沢山の植物が登場するのに、若い人は名前に接する機会もないのは残念」とのお考えでした。一方、福田先生は大学で植物学分類学を研究した方ですから「名札には正式な学名、属と種小名だけでなく命名者まで、さらに、分類科名も入れるべきだ」と思っていたそうです。
有馬先生から当時の教育や令和にまつわるお話を聞き、この木がはじまりだったのかと感慨深く見上げる福田先生。撮影日時: 2019:05:17 14:08:26
この名札計画に関係した私が名札にQRコードをつけて、それぞれの種のページを閲覧できる仕掛けをと提案しました。各種のページは、武蔵高中の卒業生である福田先生に、武蔵との関わり、木の利用方法など、文系の生徒や学生に親しみやすく、読んで楽しい、そして何よりも武蔵の歴史と営みを感じれる文書をとお願いしました。

植物学者として長年、日本各地や時には外国で撮りためていた福田先生の写真から、木の樹形、葉、花、実や植物の特徴がわかるものを一種について5・6枚も探し出していただきました。幸い、学園当局からの技術支援や予算の裏付けもあり、この2年間かけて68種に名札を設置しました。

実は、この武蔵樹木QRプロジェクトは、武蔵学園バーチャル博物館の柱の一つとして構想したものです。QRコードとスマホの普及にともない、どこでもいつでも情報を得ることができる時代となりました。武蔵はもうすぐ100周年を迎え、学園に刻まれた歴史を多様な形で発信できるように、樹木だけでなく、場所や建物にもQR解説板をつけ、スマホをかざせば場所の歴史、古い写真、エピソード、ときには先輩のインタビュー音声なども聴くことができる仕掛けを作りたいのです。

自分で興味を持って自ら積極的に入手した情報は長く記憶に残りますが、プッシュされた情報やパンフレットは直ぐに消えてしまいます。生徒や学生、教職員、あるいは訪問者が、ほお!そうだったんだなどと、長い100年の学園の教育と緑の歴史をわがものとして継承していって欲しいと願ってやみません。

  • ラベルを設置方法を試しているところ。撮影日時: 2018:07:20 13:06:00
  • 樹木の成長に合わせて伸びるようにバネで名札を止める。撮影日時: 2018:07:20 13:34:04
  • 高いところに設置するため脚立も用意。撮影日時: 2018:07:20 13:12:44
  • 正門を入って講堂への道の真ん中にあるアカマツ。撮影日時: 2018:07:20 13:34:39
  • 学園創立当時も巨木だった講堂前のケヤキ。撮影日時: 2018:07:20 13:32:41
  • 学園第一期卒業生が記念植樹した講堂横の銀杏。撮影日時: 2018:07:20 13:39:58
  • このセンダンは濯ぎ川蘇生計画(1985年)のときに植えたのではなく、それ以前に鳥によって種子散布され芽生えた木だと思う。撮影日時: 2019:05:17 13:09:50