自然科学・身体運動科学分野活動ブログ
2020.06.16
- 武蔵One Point自然観察
ひさしぶりの再会ーヤマボウシとハナミズキ(Now 武蔵の自然 No-14)
大学構内には名前がついた広場がいくつかあります。学生部活動やサークル活動の拠点となっている10号館前はしらきじ広場、図書館前の濯川沿いの広場はせせらぎ広場、そしてもう一つ大学生協食堂前はハナミズキ広場です。
広場の名前の通りハナミズキが四本植わっています。この広場には掘り込みの円形スペースが設けてありますが、その前あたりに由来が書かれた立札が立っています。
「ハナミズキは公園や庭木としてなじみの深い物ですが、北米原産の植物です。尾崎行雄がアメリカ合衆国に桜の苗を贈った返礼として、日米親善の木として、1915年に東京市へ送られたのがハナミズキの始まりです。日本から送られた桜は、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のポトマック河畔の桜並木として有名です。ハナミズキの英語名はdogwoodで、この木の樹皮の煮汁で犬を洗うと皮膚病が治ることから由来しているそうです。」
ハナミズキは春四月に咲き、ヤマボウシはずっと遅れて五月に盛りを迎えます。若葉が開ききってから、木全体が真っ白になるほど咲きます。白い大きな花びらに見えるのは、花ではなくて総包というものです。四枚の総包の真ん中にあるのが花の集合体です。
この二種は共通祖先を持っていて、ミズキ科Cornus属の木です。ハナミズキは北アメリカ大陸で進化し、ヤマボウシは東アジアで進化しました。人々の思いを乗せて北米原産のハナミズキが日本にやってきて、数百万年ぶりの再会を果たしたのです。地球の営みと人の営みは、時間スケールが全く違いますが、この広場でひと休みするときには、日米の営みと植物の進化の営みとの両方を思い起してください。
武蔵にはもう一つCornus属の木があります。鳥散布される種子のためか、あちこちに実生が育ち、中にはすっかり大きくなって繁殖を始めているミズキもあります。枝葉の広げ方に法則性があり、太陽光を有効に受け取れるように葉と枝の位置が調整されています。陽を透かして見える若葉を見ながらこのルールを見つけてみてください。