経済学科 ゼミの学び

経済状況を見誤って 不利益を被らないために必要なこととは

アメリカの経済状況が 巡り巡って日本に影響する

アメリカの経済状況が 巡り巡って日本に影響する
日本経済の課題を捉えて経済政策を議論する(専門ゼミナール第2部)
「経済政策」というと、とても大きな話であるため、個人には関係ないと思う人もこれまではいたことでしょう。それが他国のことであれば、なおさらかもしれません。しかし、アメリカの経済政策が私たちの暮らしにも影響してくることは、2022年に円安が進んだことで多くの人たちが実感したことだと思います。この円安の一番の原因が、アメリカの金融政策でした。アメリカでは景気が良いために物価が上がり過ぎてしまい、あえて景気を悪くして物価の上昇を抑えようとしたことが発端です。経済政策といえば悪い景気を良くするものと思われがちですが、今回のアメリカの例はその逆で、景気を抑えて調整しようという政策がとられました。その仕組みは複雑で、アメリカの金融政策が日本の為替レートや実質賃金にも影響を及ぼします。そのため、仕組みを正しく理解していない場合、政策の影響をどのように受けるのか予測できず、思わぬ方向に事態が展開してしまうこともあります。たとえば以前、経済状況を見誤った日本のメーカーが、大きな不利益を被る出来事がありました。輸出に不利となる円高になっていくことが、ある程度予測できた時期のことです。その企業は、設備投資をして大きな工場を建て、このタイミングで輸出に力を入れる方針を打ち出したのです。結果的にはやはりうまくいかず、厳しい経営状況になったという事例がありました。

正解がない経済課題を より良く判断するために

本ゼミでは経済の課題をデータと経済理論で捉え、その解決策としての経済政策を実際に学生に考えてもらいますが、経済政策には正しい答えがあらかじめ用意されているわけではありません。たとえば、格差問題を政府がすべて解決しようとすれば、経済から活気が失われることも考えられます。国民の給与を法律などで無理やり上げれば、企業が負担に耐えられず、逆に雇用が減ってしまうかもしれません。経済政策を提言するためには、多角的に考える必要があります。そのため、根拠に基づいたディスカッションなどを通じて、より良い政策を選択していくことが重要なのです。国の経済状況や政策を見るための手法は、学生が将来直面する課題解決にも役立つことでしょう。それは企業の利益と経営方針、個人の生活と家計を見ることと同じだからです。また、適切な経済政策をより多くの人が判断できる力を持つことは、民主主義における経済発展にも必須です。答えのない問題に取り組む面白さを感じながら、ぜひ自身の政策を提案してください。

釣 雅雄 教授

一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程経済理論・統計専攻修了。日本学術振興会特別研究員 PD、一橋大学経済研究所助手、Universityof Warwick客員研究員等を経て、2022年より現職。専門は経済政策、日本経済、マクロ経済学。