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2010.12.21

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武蔵大学国際コンファランス「中国とインドの経済発展の衝撃」ご報告

武蔵大学国際コンファランス「中国とインドの経済発展の衝撃」ご報告

武蔵大学国際コンファランス「中国とインドの経済発展の衝撃」は11月23日に大盛況のうちに終了しました。当日は学期中の忙しい時期でしたが研究者を中心に100人以上の方に出席していただきました。10:00から19:00というハードなスケジュールにもかかわらず、多くの方に最後までお残りいただき、コンファランス後の懇親会にも60人以上の方に参加していただきました。多くの方から、非常に満足した、勉強になった、またやってほしいなどおほめの言葉をいただいています。

ボブ・ローソン(ケンブリッジ大学教授)の基調報告は、中国とインドのGDP成長の予測で始まり、それが日本を含む先進国に与える影響を、中国の経常収支黒字、交易条件の悪化、世界の労働市場の統合化、産業構造変化の加速の観点から論じました。伊藤誠(東京大学名誉教授)は、先進国における金融化と中国とインドの再台頭は先進国における資本蓄積の困難から発生した、脱工業化に伴う労働者の苦痛を和らげる手段としての労働組合の再生が必要であり、中国元の切り上げが国際収支の不均衡を調整するとコメントしました。

ディック・ロー(ロンドン大学教授)は、中国の経常収支黒字と2008年の世界恐慌の関係について、新自由主義による中国原因説とラディカル派による中国依存説の一面性を批判し、中国の賃金上昇による国際不均衡の解決を提案しました。丸川知雄(東京大学教授)は、中国元が1980年から1994年にかけて5分の1に減価し、その後もその水準を保っていることを指摘し、元の切り上げは必ずしも中国の国際競争力を減少させず、むしろメリットの方が大きいとコメントしました。

チャンドラシェーカー(ネルー大学教授)は、中国がハイテク製造業のハブであり、インドがハイテク・サービス業のハブであるという通説に対して、先端知識を「開発」と「実装」に区別し、先端的知識の開発は依然として先進国(特にアメリカ)とその超国籍企業で行われ、中国とインドは開発された知識を製品とサービスに実装しているだけだと主張しました。絵所秀紀(法政大学教授)は、ディペンデンシー理論と共通の弱点があると指摘した上で、なぜ中国とインドが経済発展できたのかを問題にしました。

ジョヨティ・ゴーシュ(ネルー大学教授)は、金融自由化と資本流入が減税と相まって上位層に消費者信用ブームを引き起こすことによって、インドの2002-2007年の急成長が実現したと論じました。利潤と金融業は拡大したが、雇用の拡大や大衆の生活水準向上には結びついていず、インド経済の持続的な成長のためには経済モデルの大幅な変更が必要であると主張しました。大野早苗(武蔵大学教授)はインドの資本規制が比較的厳しいにもかかわらずなぜホット・マネーが流入したのかを問い、佐藤隆広(神戸大学准教授)は1991年と2008年のインドの恐慌前に資本の過剰蓄積が発生していたことを指摘しました。

最後のラウンドテーブルでは、(1)中国とインドの経済発展は持続するのか、(2)新興大国と支配的な先進国はなぜ対立するのか、(3)中国とインドの発展が日本にどのような影響を与えるかという問いに答える形で、報告者と討論者がそれぞれの意見をまとめました。

非常に多くの興味深いまた重要な問題が提起され、1日では結論にたどり着くことができませんでした。議論を発展させるために、このコンファランスをもとにする論文集を英語で出版することを現在企画しています。
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