自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2021.04.01

  • 武蔵One Point自然観察

武蔵の桜(Now 武蔵の自然 No-29)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹

桜といえば入学式というのは遠い昔の話となりそうです。2021年3月22日は武蔵大学の卒業式でした。感染対策で三つの学部で分散して、卒業生だけということになりました。昨年は、急激に世界へと拡大し始めて卒業式も入学式も取りやめになってしまいました。今年のソメイヨシノは異例の早咲きなのですが、丁度卒業式の日には通学路の千川通りは満開でした。

写真01:講堂前の通路にあったソメイシノが傷んで伐採された後に植えた白い八重の桜品種。撮影日時:2021:03:23 08:55:07
写真02:正門には名残惜しそうに互いに記念撮影する卒業生が集っていました。撮影日時:2021:03:22 11:59:39
「さくら(ソメイヨシノ)の4月1日の開花ラインの変化」気象庁ホームページ
 サクランボ、スモモ、プラム、アーモンドなども桜の仲間です。桜は主に北半球に分布していて200種もあります。日本でも10種ほどが分布し、100ほどの変種や品種が野生し、人為的な園芸品種は300もあるとされています。同じ土地でも早春から晩春まで次々と咲き誇る桜を楽しむことができます。武蔵には多様な品種の桜が植えられていますので、長く桜の花を見かけます。このページの最後に武蔵の多様な桜のアップ写真があるのでお花見をバーチャルで楽しんでください。2月21日にはすすぎ川沿いの河津桜が満開でした。

染井吉野桜は日本全国に広がっている代表的な品種で、接ぎ木、挿し木で増やした遺伝的クローン植物です。そのため、それぞれの地域でその地域の気候を反映した開花スケジュールで同じ日に一斉に開花します。
地球温暖化が進んでいることは桜の開花日を思い出せば、わずか十数年でも早まってきたなあと思っていることでしょう。今年2021年は、1953年に気象台が統計を取り時始めて以来、昨年と並んで最も早い開花となりました。平年に比べると12日も早いそうです。桜前線という言葉がすっかり定着しました。日本各地南から北まで、全く同じ遺伝子構成を持った染井吉野桜が植栽されているので、開花によって気温変動を知る手がかかりとなります。気象庁が統計を取ったおかげで、40年ほどで生物季節がこんなにも北上しているのだと実感できる観測結果です。

桜はどのように咲くのかの鍵言葉は休眠打破です。暖冬だからといって桜は早く咲くわけではありません。桜は夏の間に花芽が作られ、葉が茂っている間に休眠し落葉します。その後、冬の寒さに一定期間さらされて休眠打破が起こります。その後、春に向かって暖かくなると花芽が一斉に成長し、一気に開花します。春に向かっての日々の気温の累積温度が関係しているとされ、開花予想の根拠になっているそうです。

休眠という現象は種子でもあり、時には数千年の眠りから覚めて成長することもあります。大賀蓮として有名なエピソードでは、約2000年前の千葉県検見川の遺跡から発見した種子を育てると花が咲いたのです。その後世界各地へ広がっています。オーストラリアに分布する植物では、山火事で発生したシアン化物が発芽シグナルとなるという研究もあります。
  • 写真04:まだ氷点下の気温が混じる頃建だが、すすぎ川上流の池そばの河津桜が咲き始めていた。撮影日時:2021:02:21 10:41:47
  • 写真05:品種はわからないが、早咲きの桜がヤギ小屋の前に咲いていた。撮影日時:2021:02:21 15:31:07
  • 写真06:2月21日から2週間後、咲いていた桜には若葉が広がり、散りかけていた。撮影日時:2021:03:07 09:25:01
  • 写真07:すすぎ川の周りにはいろんな品種が植えられているので、春先は散歩してみてください。撮影日時:2021:03:19 10:14:42
  • 写真08:ひよどりが盛んに桜の花をつついていた。きっと蜜を求めているのだろう。撮影日時:2021:03:19 10:19:25
  • 写真09:枝垂れる品種。撮影日時:2021:03:19 10:13:26
  • 写真10:卒業式にはちょうどの勢いで染井吉野も咲いていた。撮影日時:2021:03:19 10:14:00
  • 写真11:江戸の上水道だった千川上水が流れていた通りが西武線江古田駅からの通学路になっています。上水に沿って植えられたのが今も武蔵生を楽しませている桜並木です。撮影日時:2021:03:23 08:46:32