日本・東アジア文化学科ゼミトーク

戸塚ゼミ:森鴎外は維新の先にどんな光を見ていたか

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文学と歴史が交差する歴史小説に的を絞る

学生 先生にもご相談していた卒業論文のテーマを、ほぼ固めました。森鴎外の歴史小説『堺事件』を題材にして、史実と一致する部分と創作の部分を明確にし、創作した部分について、なぜそうしたのかを掘り下げていきたいと考えています。

戸塚 明治維新に関心があると話していましたね。私も参考文献はいくつか紹介しましたが、『堺事件』という作品を選んだ理由は何ですか。

学生 堺事件は、生麦事件に似た、攘夷派の武士が外国人を殺害してしまった事件です。先生の助言を参考にしながら、私は作家に目を向けました。鴎外は若い頃ヨーロッパに留学し、外国の実状をよく知っていました。そういう先進的な知識人の目から見て、当時の日本や日本人がどう見えたのか、どう思っていたのかを読み込んでみたいと思います。

戸塚 文学と歴史がクロスするところへ切り込んでいく、ということですね。

学生 日本文学も日本史も好きなので、両方を同時に考える「文学史」に興味がありました。趣味ではなく、研究対象として文学を読むという意味でどこまで完成度を高められるか、頑張ってみたいと思います。
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心理描写のない簡潔な文体から鴎外の真意を読み解く

戸塚 研究を始めて今どんなことに気づいていますか。

学生 『堺事件』の文体はとても簡潔で淡々と事実を列挙しているだけで、心理描写はありません。それでも部分的に創作が入っているとすれば、そこに鴎外なりの思いや考えがあるはずです。今のところ私には鴎外は攘夷派の武士に思い入れがあるように感じているのですが、それが正しいのか、確かめるために読み込んでいます。

戸塚 鴎外の眼を通して、あなたの維新観が変わるかもしれませんね。

学生 鴎外は『舞姫』など情緒豊かな小説も数多く書いています。やはり、なぜ堺事件を取り上げたのかに、興味の中心があります。鴎外の性格や考え方を知ることで私自身の考えの幅も広げられればいいのですが。

戸塚 卒業論文に着手すると、そこで新たな壁が出てきて、もう一度自分を見つめ直すことになるでしょう。そこでめげずに頑張ることで、本当の「楽しさ」を発見できるはずです。困ったときは遠慮なく相談してください。
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About Seminar

明治から昭和の文学作品を精読します。ストーリーだけでなく語りの特徴や言葉の工夫にも注目して、作品の豊かさを引き出す読み方を学びます。時代やテーマを決めて、集中して読んでいきます。

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戸塚 学 准教授
※掲載されている内容は、取材時(2018年度)の内容です。