経済学部ゼミブログ

2024.03.19

  • 経済学部
  • 経営学科

生成AIとコンテンツ作成

ブログ投稿者:経営学科 教授 竹内 広宜

2023年度、技術に関する大きな話題の1つに「生成AI」があるでしょう。2022年11月に発表されたChatGPTは幅広い分野の質問に対して、人間が自然と感じる回答をする特徴があり、瞬く間に利用が広まりました。大学でも授業や課題などで生成AIをどのように使うべきかが議論され、各大学がWebなどで生成AIの利用について方針を出しています。また、2024年2月15日にはSoraと呼ばれる動画生成AIが登場し、世の中を信じられないスピードで変えようとしています。
実際、多くの学生がいろいろな場面で生成AIを利用していますが、私の専門ゼミナール第2部(3年生ゼミ)では生成AIが出力するコンテンツについて考えました。生成AIの中には、文章からそれを表す画像を生成するものがあります。ゼミではまずそのような画像生成AIを使ってどのような結果が得られるのかを試行しました。「同じ絵でもスタイルを変えると違う」「あたかも有名画家の新作のようだ」といった気づきが得られました。以下はゼミ活動の中で生成AIを用いて作成した画像の例です。
  • 北斎風の犬
  • ムンクの叫びのように書いた犬
  • ピカソが書いたサメ
この活動を通して、簡単に絵が描けることに驚きがあがるとともに、いろいろな懸念や疑問が出てきました。以下はその一部です。

・本物かどうかの判定は誰がどのようにするのか?
・漫画や絵を描く人にとっては、作風を盗まれることにならないか?
・生成AIで作成された画像や絵として、既存のものとそっくりなものが出てきたらどうするのか?

こういった疑問を解決すべく、公開されている資料をゼミの中で読み解き、グループに分かれて整理しました。
生成AIは機械学習と呼ばれる技術を使っています。機械学習ではデータをもとにモデルを訓練し、そのモデルを使って予測を行います。このモデルの訓練にどのようなデータを使ってよいか、というデータの著作権についての解説文書をゼミでは取り扱いました。その中で著作権法30条の4によると、「著作物が、コンテンツを視聴する目的以外の目的で利用される場合、通常は、著作権者の利益を害さないことから、許諾がなくても著作権侵害にあたらない」とあり、著作権の観点から機械学習を目的としたデータ収集に大きな問題がないことがわかりました。これを通して、「生成AIを使う際には、入力に気をつける(個人を特定する情報を入れるのは危険)」というガイドラインは「自分らが入力している文書が機械学習に用いられてしまう」という理由があるのだと理解が進みました。一方、著作権の侵害の判定には著作物性・類似性・依拠性の要件を満たす必要があり、ケースごとに判断することになっていることが、わかってきました。生成AIは利用が容易であるため、数多くの問題ある画像が生成されているのが現状で、1つ1つを吟味することは難しく、生成AIツールとして利用ルールのようなものを設けるべきではないか、といった結論が出ました。
著作権法第30条の4で述べられていることは日本固有のもので、これが日本での機械学習の活用を促進していた面がありました。しかし、生成AIの登場により、著作権法やその解釈が変える必要がある、というのが現在の状況です。著作権だけでなく生成AIの利用に関するルール整備が必要という、「現在進行中の問題」を実感したゼミ活動となりました。