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赤城山実習 2013年

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自然科学集中プロジェクトA 赤城山実習 2013年

この科目の正式名称は「自然科学集中プロジェクトA」です。群馬県赤城山で実習するので、通称赤城山実習と呼んでいます。2013年の実習参加者は、学部学生が一名、練馬区聴講生が一名でした。しかし、同じ時期に武蔵高中化学部の合宿調査が行われ、生徒さんたちにも調査活動に参加してもらいました。モミの幼樹の数を調べる調査とミズナラの巨木林の林床でのミズナラの幼樹調査を一緒に行いました。

植物の最も基本的な特性は、動けないことです。そのため、植物がその場にあることは、長い時間の個体間関係の蓄積の結果なのです。当たり前ですが、種は一度芽生えた場所からは動くことできません。植物の最大の特徴は固着生物だということです。したがって、最初に生えたときの地面の環境が大きく影響します。その後は、周りの植物個体全体のまとまりである植物コミュニティーの個体間競争によって一本一本の運命が定まっていきます。偶然の出来事や病害虫、そして人間による操作によっても運命が左右されます。

固着生物であることと個体間競争、この二つの視点から植物コミュニティーを見るためには、木には種ごとに生育適地があることを発見することが肝要です。例えば、種名がわからなくても同じ木がまとまって集団で生えている場所があるとすると、この数十年間の森林動態の結果なのだと気づくことがきます。実は、この赤城山には、そうした小さなスケールで森林が大きく変化している場所がモザイク状になっているので、ほんの数百メートル歩き回っただけで植物生態学の中心概念である動態つまりダイナミクスが理解し易い好適なフィールドなのです。

自然科学では、まずしっかりと観察し、何か不思議なこと、あれっ?と思えることを発見することが最初の一歩です。そうして、仮説を立て、それを実証するための調査方法を考案し、結果をとりまとめて、最初の仮説を検証するという研究方法が確立しています。つまり、現実と思考とのサイクルが重要です。でも、同じ調査をすれば、同じ結果が得られるということではありません。自分が自ら調べ考えることで、木と同じように成長することができるのです。多くの知識を断片的に蓄えるだけではなく、現場でも使える知識に組み立てなおす柔軟性こそが、学ぶ力の本質なのです。それこそが、自ら考え学ぶということだと思い、この実習が組み立てられているのです。

最後に、自然の中で豊かな経験ができるのも、武蔵学園の赤城青山寮があるからです。教育には、効率だけではない、教育上の豊かさをどのようにうまく組み込んでおくかが肝要です。ぜひ、この施設をこれからも多様な経験の場として利用できる仕組みを維持していくべきです。そもそも、赤城青山寮を軽井沢から移設したのは、豊かな自然のなかで落ち着いて勉学する場を創ることだったのですから。最後に毎食、美味しい食事を楽しませていただいた青木旅館さんに感謝いたします。

■調査結果 抜粋

多くのデータを採取し分析したのですが、なかでも重要な結果を一つだけ報告しておきます。森林内のギャップには太陽の動きにしたがって、光があたる時間が変化していきます。以下の図は調査日程のなかで良いデータが取れた一日間の照度と温度変化を示しています。

森林外の駐車場と湖そばの二つを森林外、森林内には五メートルおきにギャップに調査地点を設定しHOBOで測定した結果を取りまとめたものです。森林内では、光照度が急激に高まる時間が一時間程度あって、それに対応して温度も太陽光のあたったいない地域に比べて5度前後も変化しています。みなさんも日向ぼっこを思い起こせば良くわかることでしょう。こうした強い光と温度の変化が、活発な光合成を引き起こし、成長を進めることができ、数十年も経過すればギャップを埋め尽くすように木々が成長していくことでしょう。

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昼間の場所別、1時間ごとの平均照度。


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夜間も含めた一日24時間について、場所別1時間ごとの最低温度との差分の時間変化。すべての測定点のなかでの最低値を取り出し、その温度との差を求めたものです。


以下、フィールドワークの雰囲気を表している写真で実際の活動の様子を紹介したいと思います。

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    調査地で鳥の撮影をしていた三橋さんが撮影してくださった調査チーム。
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    調査地に設定したところには、ミズナラの巨木が高さ二メートル足らずの所で折れてしまい、大きなギャップが形成されていた。森林のなかで大木が倒れて大きな穴が生じることがありますが、その空間をギャップと呼びます。光環境の激変に対応して、木々のこどもたちが一斉に成長を競い合う場です。
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    1分間ごとに温度と照度を測定できる通称HOBOという、微気象調査のための装置をセットするため林床に穴を開けて木の棒を立てる。
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    種から発芽したばかりの実生図鑑を、手作りで作成し、この森に生える木々の営みを実感する。
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    精密な測量機で木の空間配置を調べる作業。
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    武蔵高中の化学部の生徒さんと一緒にモミの実生数の調査中。
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