自然科学・身体運動科学分野活動ブログ

2022.11.09

  • 国東農業研修

研修後レポート 石平青 (国東-2022-32)

ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹(Professor Tamaki MARUHASHI)

 今回の国東半島農業研修では様々な景色を見、色々な方と出会い、お話を伺う中で、多くのことを学ぶことが出来た。私は自然との関わり方を学び、また今後の人生について改めて考えるためにこの研修に参加したが、当初の目的以上に得るものがあったと思う。

 まず学んだのは、自然についての考え方である。私は手つかずの自然というものに漠然とした憧れを抱いており、研修参加前は山や川などの大自然の中で研修期間を過ごすものだと考えていた。しかし実際に平田井堰や水路管理の行き届いた水田などの現地の風景を観ていく中で、私が「自然」と聞いて漠然と思い浮かべていたもののあらゆる所に人間の知恵や技術が息づいていることを知った。私はそれを残念だとは思わず、むしろ美しいと感じた。山と森の草木や河川、更に昔の人々が生きていくために生み出した地形や設備。それらが美しく調和した風景こそが日本における「自然の風景」なのだろう。

 また研修では、小ねぎ一筋40年の長廣さんや出産をきっかけに水耕栽培の会社を立ち上げた平山さんをはじめとした農家の方々や、国東に移住して七島藺農家の後継者になった方、学生としてこの農業研修に参加したことをきっかけに現在は移住して国東で働いている武蔵大学卒業生の方など、本当に様々な人からお話を伺うことが出来た。その中で、フットワーク軽く様々なことを体験していくことが大切なのではないかと思った。無論それは好き勝手にやっていいということではなく、その時その時で自分に出来ることを精一杯やらなければならないだろう。私は動く前にあれこれと考えてしまい結局何も出来ないことが多い。しかしこの研修を経て、若いうちに様々なことに興味を持ち、フットワーク軽くあらゆることを体験していきたいと思った。そしてその中で、研修で出会った人たちのように自身にとって譲れないもの、大切なものを見つけることが出来たらと思う。

 私がこの研修で特に印象に残っているのは、七島藺農家の松原さんの作業場での体験である。収穫した七島藺を、昔ながらのピアノ線を使った器具と現在使われている機械の両方を使って割く体験をさせていただいた。機械には七島藺の束をセットするだけでよく、あっという間に綺麗に割けた七島藺の山が出来た。しかし私はピアノ線を使った昔ながらのやり方の方が好みだった。ピアノ線を通って七島藺が割ける「ビイィー」という音を聴きながら、ひたすらに作業を進める。自分はこういった黙々と打ち込める作業が好きなのだなと気付いた。

 しかし、現在では機械を使った作業が主であり、ピアノ線を使った器具はほとんど使われないのだという。機械化により作業がより早く楽になるのはとても良いことだと思う反面、少し寂しさを感じた。七島藺は国東独自の生産物であり、今回の体験は研修に参加しなければまず出来なかったであろう。改めて、機会を与えてくださった松原さんご夫妻にお礼を申し上げたい。また、松原さんの下での体験の後に作った七島藺で編んだミサンガは、この研修での宝物である。

 また、この研修では学年も学部学科もバラバラな学生さんたちとも親交を深められた。学年は私が一番上であったが、皆気兼ねなく話してくれてとても楽しかった。この研修に参加したメンバーも含めて、最後に、研修を主導してくださった丸橋先生をはじめ、研修で関わった全ての人たちにお礼を申し上げたい。貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。
  • 機械にまけじと左手にある一束すべてを割いてしまうと、かつての道具でこだわりの手作業を続け、割き終わった石平さん。撮影日時: 2022:09:03 11:17:41